混迷する米大統領選挙
バイデン氏優位、トリプルブルー、来年の経済政策への期待が高まってきていますが、しかしながら、大統領選までまだ一波乱も二破乱もありそうです。
12日から、トランプ大統領が最高裁判事に指名したバレット氏に対する上院司法委員会での審議が開始されました(15日まで)。22日の司法委員会での採決を経て、26日の週に上院本会議採決が予定されています。上院本会議で過半数の賛成票が得られれば、指名が承認されます。トランプ大統領と共和党は保守層にアピールするため、大統領選挙前の承認を目指していますが、一筋縄ではいかないかもしれません。
なぜなら、上院では共和党が過半数を握っていますが、議員2人が反対する意向を表明していること、そして、10月に入り上院では共和党議員3人が新型コロナウイルスへの感染が判明、さらに、共和党議員数人が自主隔離に入っているとの話もあり、今後も感染者が相次ぐことになれば、採決に影響が及ぶことも予想されるからです。トランプ大統領は、法廷闘争にもつれ込んだときに備え、大統領選挙前に指名したいところですが、指名がスムーズに進まなければ、トランプ大統領にとっては不利になります。
また、15日の第2回討論会は実行委員会が中止と決定しましたが、個別にやるとの話もあり流動的な情勢です。
そして、新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領の職務遂行能力への懸念が高まる中、民主党のペロシ米下院議長は8日、大統領の「罷免」について規定した憲法修正第25条について議論することを明らかにしました。
トランプ大統領は5日に退院してホワイトハウスで治療を継続していますが、「陰性」の検査結果についてはなかなか公表されませんでした。12日、トランプ大統領が「陰性」と判定されたと主治医は発表しましたが、検査の具体的な日付には触れていません。現在の容体で職務を続けられるのかという懸念は、まだくすぶっています。また、ペロシ下院議長は、トランプ大統領が未承認の治療薬を取り入れ、その治療薬によって日常的な意識を保てる状態ではなかったのではないかとの疑念も持っているようです。
憲法修正第25条第4項では、「もし大統領が権限移譲を拒否しても、副大統領と閣僚メンバーの過半数、または連邦議会が法律で定める他の機関の長の過半数が、上院議長代行および下院議長に対して、大統領が職務上の権限と義務を遂行できない旨を書面で通告した場合には、副大統領が大統領代行になる」と定められています。下院民主党は、25条に基づいて、大統領に職務遂行能力があるかどうかを判断する議会委員会の設置を提案するとのことです。
現実にトランプ大統領が「罷免」されるとは思えませんが、こういう規定があり、民主党が動いているということは留意しておく必要があります。
米大統領選挙まであと3週間となってきましたが、ワシントンの政局はこのようにざわついています。