トリプルブルーを織り込むマーケット
9月29日のテレビ討論会やトランプ米大統領の新型コロナウイルス感染以降、バイデン氏とトランプ氏の支持率の差が拡大したため、バイデン氏優位が鮮明となり、マーケットはバイデン勝利、かつ「トリプルブルー」を織り込みだしました。トリプルブルーとは選挙で大統領、上下院とも民主党が勝利することです。ブルーは民主党のイメージカラーなのです。
バイデン氏は増税政策のため、経済にはネガティブとの見方でしたが、民主党の経済対策の規模は大きいと、マーケットはポジティブの見方に転じ、株高、ドル安となり、これを受けてドル/円は106円台から105円台半ばに下落しました。ただ、クロス円はしっかりしているため、ドル/円の下落も限定的な動きとなっています。
追加経済対策について両党が歩み寄り、協議が進展していることも株の支援材料となっていますが、全面合意にはまだ時間がかかりそうです。ただ、航空会社と中小企業への支援案の合意への期待は高まっており、マーケットも織り込みつつあるようです。
混迷する米大統領選挙
バイデン氏優位、トリプルブルー、来年の経済政策への期待が高まってきていますが、しかしながら、大統領選までまだ一波乱も二破乱もありそうです。
12日から、トランプ大統領が最高裁判事に指名したバレット氏に対する上院司法委員会での審議が開始されました(15日まで)。22日の司法委員会での採決を経て、26日の週に上院本会議採決が予定されています。上院本会議で過半数の賛成票が得られれば、指名が承認されます。トランプ大統領と共和党は保守層にアピールするため、大統領選挙前の承認を目指していますが、一筋縄ではいかないかもしれません。
なぜなら、上院では共和党が過半数を握っていますが、議員2人が反対する意向を表明していること、そして、10月に入り上院では共和党議員3人が新型コロナウイルスへの感染が判明、さらに、共和党議員数人が自主隔離に入っているとの話もあり、今後も感染者が相次ぐことになれば、採決に影響が及ぶことも予想されるからです。トランプ大統領は、法廷闘争にもつれ込んだときに備え、大統領選挙前に指名したいところですが、指名がスムーズに進まなければ、トランプ大統領にとっては不利になります。
また、15日の第2回討論会は実行委員会が中止と決定しましたが、個別にやるとの話もあり流動的な情勢です。
そして、新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領の職務遂行能力への懸念が高まる中、民主党のペロシ米下院議長は8日、大統領の「罷免」について規定した憲法修正第25条について議論することを明らかにしました。
トランプ大統領は5日に退院してホワイトハウスで治療を継続していますが、「陰性」の検査結果についてはなかなか公表されませんでした。12日、トランプ大統領が「陰性」と判定されたと主治医は発表しましたが、検査の具体的な日付には触れていません。現在の容体で職務を続けられるのかという懸念は、まだくすぶっています。また、ペロシ下院議長は、トランプ大統領が未承認の治療薬を取り入れ、その治療薬によって日常的な意識を保てる状態ではなかったのではないかとの疑念も持っているようです。
憲法修正第25条第4項では、「もし大統領が権限移譲を拒否しても、副大統領と閣僚メンバーの過半数、または連邦議会が法律で定める他の機関の長の過半数が、上院議長代行および下院議長に対して、大統領が職務上の権限と義務を遂行できない旨を書面で通告した場合には、副大統領が大統領代行になる」と定められています。下院民主党は、25条に基づいて、大統領に職務遂行能力があるかどうかを判断する議会委員会の設置を提案するとのことです。
現実にトランプ大統領が「罷免」されるとは思えませんが、こういう規定があり、民主党が動いているということは留意しておく必要があります。
米大統領選挙まであと3週間となってきましたが、ワシントンの政局はこのようにざわついています。
コロナ・ワクチン接種「しない」が増加
トランプ大統領のカウンター材料として、大統領選前のワクチン承認が考えられますが、ワクチン接種をしないという人が春先より増えてきており、効果も限定的となりそうです。
ワクチン接種について、米CNNテレビが5月に実施した世論調査によると、33%が「接種しない」との結果でした。特に35~49歳では45%と高く、トランプ大統領の支持者、共和党の支持者もそれぞれ47%が「接種しない」とのことです。
別の米調査会社によると、4~5月にかけての調査では、「接種しない」が27%でしたが、9月には49%に増えているとのことです。
このような調査結果は、米国民だけが特別ではないようです。欧州でも日本でも「接種しない」人の割合は高いようです。電通が8月時点で、20~60代の計1,000人にワクチンの効果や安全性を聞いたところ「余り信用できない」「全く信用できない」との回答が約3割だったそうです。
マーケットはバイデン氏優位を歓迎
マーケットはバイデン氏優位を歓迎していますが、このままバイデン氏勝利で終わるのでしょうか。今回も隠れトランプ支持者が5%ぐらいいると言われており、第1回の討論会以降、ますます隠れてしまったという見方もあります。
政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスによると、バイデン氏は各種世論調査の全米支持率の平均でトランプ大統領を9.7ポイントリードしているが、大統領選挙の勝敗を左右する激戦6州(※)では、バイデン氏のリードは4.6ポイントと全米の半分以下となっています。そして注目すべきは、2016年の大統領選挙での今とほぼ同じ時期の激戦6州(※)の支持率の差は、クリントン氏がトランプ氏を4.8ポイントリードしていました。バイデン氏よりも優勢だったにもかかわらず、勝利したのはトランプ氏でした。
まだまだ勝敗は分かりません。
11月3日が近づくにつれて投資家は慎重になり、それまでバイデン優位で積み上げてきたポジションの調整の動きが見られるかもしれません。そして、その間のドル/円は、選挙の勝敗を見るまでは大きな方向感もなく、1ドル=105円台を中心にさまよえる相場になるかもしれません。
※激戦6州…フロリダ、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン、ノースカロライナ、アリゾナ
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。