金も原油も、同時に複数の材料が作用し、相殺され、価格が決まっている

 金と原油はともに、当該ツイートをきっかけに、その後の選挙戦や選挙後の展開への思惑を含む、上昇・下落、複数の材料を織り込み、価格が推移したと言えます。まとめれば、以下のようになります。

図:当該ツイート直後の金と原油の市況環境

出所:筆者作成

 金も原油も、上昇・下落、いずれも存在し、上昇・下落それぞれにおいても、複数の材料が存在するわけです。材料を1点だけでみて、値動きを説明できないことが、改めてわかります。

 “トランプ大統領感染”“金価格上昇”というキーワードをみると、不安(有事)の拡大で金が買われている、と考えたくなりますが、それは金相場の一部であり、すべてではありません。他にも、株安起因の“代替資産”の需要拡大という上昇要因があります。一方で、ドル高起因の “代替通貨”の需要減少、新興国の宝飾需要減少懸念などの下落要因が存在しています。

 原油も同様です。“トランプ大統領感染”“原油価格下落”というキーワードをみると、株価が不安定化していることから、需要減少懸念で原油が売られている、と考えたくなりますが、それは原油相場の一部であり、すべてではありません。他にも、クリーンエネルギー推進による需要減少懸念という下落要因があります。一方で、OPECへのけん制力低下という上昇要因が存在しています。

 同時に複数の材料が作用し、相殺され、価格が一つの方向に進む、という考え方は非常に重要ですので、今回のトランプ大統領感染を機に、習慣付けるとよいと思います。