先週出た強材料を検証

【1】製造業に回復の兆し(日本)

 経済産業省が9月30日に発表した、日本の8月の鉱工業生産指数(速報)は、前月比1.7%上昇し、88.7となりました。水準はまだ低いものの、回復が続いていることが確認できました。

 また、日銀が10月1日に発表した、9月の日銀短観で、「大企業・製造業DI(業況判断指数)」は▲27と、前回(6月)調査から、7ポイント上昇しました。同指数の先行き(12月)予想は▲17と、さらに10ポイントの改善が見込まれています。こちらも、水準は低いものの、回復基調が続く見込みであることが示されました。4-6月から中国景気が回復している恩恵が出ています。また、欧米の景気も、7-9月から回復しつつあることへの期待もあります。

 日銀短観では、「大企業・非製造業DI」の回復が鈍いことが気がかりです。外国人観光客が戻ってこないことが、ダメージとなっています。ただ、10月1日よりGoToトラベル・キャンペーンに東京が加えられることで、国内での旅行需要がかさ上げされることに期待が出ています。

【2】NTTがドコモに4.2兆円TOB

 NTTは9月29日、ドコモにTOBをかけ、完全子会社にすると発表しました。TOB価格は、28日の終値に約4割のプレミアムを乗せた3,900円。二段階買収で、TOBに応募しない株主の持ち分も、事実上、強制的に買い取るスキームとなっています。現金での買い取りで、予定通り、少数株主持ち分を全て買い取るのに4.2兆円必要です。NTTは、必要資金を、銀行借り入れでまかなうと発表しました。ドコモ株はこの発表を受けて、4割上昇し、TOB価格にサヤ寄せしました。

 ドコモの株主に、総額4.2兆円の現金が支払われることになります。これは、日本の株式市場に、需給面で大きなプラス材料です。

 総務省は今年、新型コロナ感染拡大に伴う緊急経済対策の一つとして、国民1人当たり一律10万円(事業費総額12兆8,802億円)の特別定額給付金を実施しました。一部は消費や投資に回りましたが、大部分は、現時点で預貯金に入ったままと考えらえます。

 ドコモ株主へ渡る4.2兆円も、一部はそのまま預貯金に入る可能性もありますが、もともと株式投資に振り当てられていたお金ですから、株式などの投資に振り向けられる可能性もあります。仮に、半分が株式投資に向かうと仮定しても、2.1兆円の買い需要となります。