現実的な資金管理方法

実質利回りを考慮する式6も、iPhoneの電卓アプリなどを使って(iPhoneを横に構えて電卓アプリを使うと結構便利な関数電卓が現れる)、その場で計算することができるが、実質運用利回りはゼロ、即ち「運用利回り=インフレ率」として式3で必要貯蓄率の目処を考え、適宜運用資産額Aを修正しつつ、リスクについてはマイナス2標準偏差のケースの損失を360(12カ月×30年間)で割って、最大損失額を毎月の取り崩し可能額に置き換えて見当を付ける方式で、貯蓄計画に関しては「やや保守的に」(=実質利回りゼロ)、リスクについては大まかに扱うと、総合的には考えやすいのではないだろうか。

尚、インフレにならないうちからインフレ・リスクに対して大慌てで備えない方がいいが(往々にしてダメな投資をする原因になりやすいので)、リスクフリーな運用対象で運用するだけでは、インフレに追随しきれなくなる可能性があることは一応頭に入れて置いて欲しい。

最後に、今回ご紹介した、お金の意思決定に使える式を3本再掲しておく。特に、現役時代の貯蓄と老後生活と簡便式については、手帳にでも書いておいて、貯蓄と支出を考える(多くの場合、たぶん「反省する」)材料として大いに使って頂きたい。

お金の意思決定に便利な計算式

諸変数の定義

Y:可処分所得(手取り年収、円。今後の現役時代の概ね平均を想定して下さい)

s:貯蓄率(現役時代に可処分所得の中から貯蓄に回す比率)

x:「現役の生活費」に対する「老後の生活費」の比率

a:現役期間(年数)

b:老後期間(年数。なるべく余裕を持って設定して下さい)

P:老後の定期収入(年額、円。主に年金を想定。Pensionの「P」)

A:現在の資産額(円)

必要貯蓄率sの計算式(運用利回りとインフレの差は0)

   (式3・再掲)

現役貯蓄率から老後生活を想定する式(運用利回りとインフレの差は0)

   (式4・再掲)

実質運用利回り「i」(将来の期待利回り-予想インフレ率)を前提とした、必要貯蓄率(s)を求める式

   (式6・再掲)