その3.非効率的経営

 例えば、(A)資産を有効に活用していない企業、(B)株主からみて配当や自社株買いが適当なのに多額の現金性資産を抱えている企業、(C)コーポレート・ガバナンス(企業統治)が劣る企業、(D)IRが下手な企業、(E)事業分野が多岐にわたって「コングロマリット・ディスカウント」的評価を受けている企業、(F)経営者の資質が劣る企業、などは、投資家から嫌われて、株価が低く評価される場合が多い。「残念な企業」である。

 しかし、こうした企業には、ビジネス自体が伸びなくても「経営を少し変えるだけで」株価の評価を上げる余地がある。

 残念な企業がなぜその状態にとどまっているかに関しては、各社の事情があるだろうが、例えば、時期が来て、「ひどくダメな社長」が「普通の社長」に交代するだけで、その企業の株価は上昇する可能性が大きい。

 こうした意味では、「株主から見た経営的な非効率性」は後に株式のより高いリターンを実現する「潜在力」として評価することができる。

 例えば、米国企業が既に株主向けの経営に最適化されていて、日本企業が株主本位の経営が十分できていないと仮定すると、投資する上でより魅力があるのは日本企業の方だろう。

 現実に、多くの日本企業にはこうした意味での投資魅力があるのではないかと、筆者は近年考えている。

 例えば、日本の総合商社は、配当利回りが高く、PBR(株価純資産倍率)が低く、「割安銘柄」として名前が挙がることが多いが、資源ビジネスのリスクといった要因以外に、上記の(A)、(B)、(E)が該当する可能性がある。

 最近明らかになった米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏の大手総合商社5社への投資には、商社の「経営的非効率性改善の可能性」を評価した面があるのではないだろうか。そうなのだとすれば、5大商社の経営者たちにとってはあまり格好の良い話ではないが、今後の経営については大いにやり甲斐があるというものだろう。

 繰り返すが、日本株全般に関して、「経営的非効率性改善の可能性」が買い材料として評価できるのではないだろうか。