その2.個別の悪いイベント

 個別銘柄単位での悪材料もしばしば投資のチャンスを提供する。

 悪材料とは、製品の不良、工場等の災害被害、粉飾決算の発覚などの不祥事といった、いずれもニュースで報じられるようなマイナス情報だ。

 具体的な名前を挙げると生々しいので、架空のケースを考えよう。

「例えば、材料発覚前に時価総額5千億円で評価されていた企業Xに、最大1千億円相当の会計不正が発覚したとしよう。このニュースを受けて、企業Xは大いに批判を浴び、その株価は大幅に下落することになる。

 例えば、株価が半値に下がると、時価総額で2千5百億円となるが、企業Xのビジネスが堅調であれば、企業Xの時価総額は4千億円程度が妥当なので、徐々に株価は時価総額4千億円レベルに近いところに戻ってくる。」

 株価が妥当な価格よりも大きく下がりがちな理由には、(1)企業イメージの悪化が過大評価されがち、(2)不祥事を起こした企業に対して投資家の処罰感情が働きがち、といったものが考えられる。しかし、「人の噂も75日」という諺がある如く、こうした要因の効果は時間とともに減衰することが多い。

 こうした悪材料で投資する場合のいい点は、悪材料は好材料よりもそのインパクトを正確に評価しやすいことだ。不適切会計も実態が明らかになればマイナス・インパクトの大きさを見積もることができるし、災害による工場などの被害もしばしば「〇〇〇億円」といった金額で評価できる。逆に、「有望な新製品」のような好材料は、それが業績上どの程度のインパクトを持つのかを予想しにくい場合が多い。

 もちろん、悪材料の評価の際には安全性を見積もって、やや大きめの数字を想定するような心掛けが必要だが、「悪材料こそ分析のし甲斐がある!」と思うことがしばしばある。