その1.マクロの悪材料

 一つには、経済や金融などの環境が全般的に悪化した場合だ。典型的にはリーマンショック後のような状況や、直近では2020年3月を底とするコロナショックのような状況での投資が該当する。

 こうした「ショック」と呼ばれるような環境の悪化では市場にあって以下のような行動が想像できる。

  1. 投資分析に基づくのではない売りが発生する(「アンインフォメーショナル[非情報的]な売り」という表現が使われることがある)。例えば、ファンドの解約請求があると、ファンドマネージャーは「今の株価なら買いたい」と思っても、価格に関係なく株式を売らなければならない。
  2. リーマンショックでも、コロナショックでも、経済システム(特に金融システム)が破壊された時のコストがあまりに大きいので、金融・財政などの政策が投入されることが多い。しかし、悪材料発生時では政策が見通せない場合が多く、事後的に見ると、市場参加者が政策の効果を過小評価している場合が多い。
  3. 市場参加者の心理が「恐怖」に傾いたときに、リスク・プレミアムが拡大して予測の悪化以上に株価が下がる。

 コロナショックでは、上記全てのメカニズムが働き、大方の予想以上に速くかつ深く株価は下落したし、その後、政策の効果とリスク・プレミアムの縮小によって株価の戻りは再び予想以上に速かった、ということではなかったか。