もちろん「割安」の判断の正しさとその後の優位な値上がりが実現するか否かが大事だが、ベンジャミン・グレアム方式だと、仮に投資時点での判断が正しくても、投資した時点で割安だった株式が適正水準に上昇したらこれを売らなければならない。

 すると、その際に国や個々の事情によって税率は異なるが、税金を支払わなければならないし、もちろん売買には証券会社の手数料とマーケット・インパクト(自分の売買による株価変動)によるコストが掛かる。

 こうした事情を考えると、「売らずに長期保有できる株」の価値が大きいことにバフェット氏は気づいた。この気づきには、バフェット氏の長年のビジネス・パートナーでバークシャー・ハサウェイのナンバーツーであるチャーリー・マンガー氏の貢献が大きかったようだ。

 この考えは、「適正な価格で売られている偉大(グレート)な会社は、割安な(グレートな)価格で売られているそこそこの会社よりも優れている」というマンガーの言葉に集約できる(監訳・林康史、翻訳・石川由美子、解説・山崎元「マンガーの投資術」日経BP社)。

 バフェットとマンガーは、「グレートな会社」の評価の上では、新規参入者に対する競争上の優位性を重視しているように見える。例えば、彼らが長期にわたって株式を保有しているコカコーラ社は、大きな資本力、マーケティングの力、国際的な展開力を有しており、別の清涼飲料メーカーがヒット商品を出しても、同様の商品で後追いすることで十分以上に対抗できる。

 もちろん、株式を買う時にはその時の企業価値よりも安く買えることが望ましい。この考え方を、現在でもバフェット氏は重視している。

 日本の大手総合商社株は、「割安株」、「高配当利回り株」として名前が上がる銘柄の常連であり、悪くない投資タイミングだと考えたのだろう。