5大商社の投資判断まとめ

 増配を発表した三菱商事、伊藤忠、そして配当据え置きの三井物産は、コロナショックでも、安定的にキャッシュフローを稼ぐ力があることを示しました。これだけのショックが起こっても、配当金を維持していく力をつけたことは、ポジティブです。好配当利回り株として、積極的に投資していけると判断しています。

 住友商事と丸紅はまだ収益力にやや課題が残りますが、両社ともコロナ危機が去った後は、収益が大きく回復すると考えています。丸紅はすでに回復が始まっていると判断されます。住友商事、丸紅とも、投資していく価値があると考えます。

事業拡大に貪欲な総合商社

 総合商社の戦略は、資源もなく少子化が進む日本がどう生きていくべきか、まさにその道筋を示していると考えています。政府が成長戦略としてやっていくべきことは、商社がほとんど手をつけています。

 商社は、資源のない日本が生きていくのに不可欠な「日の丸資源会社」となっています。それに加え、新興国での社会インフラ整備事業にも注力しています。発電所・鉄道・上下水道などの建設・運営を幅広く手がけています。

 総合商社は、IT、バイオ、新エネルギー、ロケットなど、今すぐ花開かなくても、将来いつか大きな成長のタネになりそうなものには、片っ端から手を出しています。その貪欲さこそが、今の日本に欠けている成長力の獲得につながると思います。

 それでいて、収益が悪化し、損失リスクが高まってきた事業に対しては、厳格な撤退基準を持っています。見込み違いだった事業からは、大きな傷を受ける前に、すばやく撤退するところが、総合商社の強さの根底にあると考えています。

 大手5社でやっている事業、リスクの取り方は異なりますが、いずれも新興国の成長を取り込みつつ、巧みにリスク管理しています。それが、投資対象として高く評価するポイントです。

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