5大商社の利益は?コロナのダメージを確認

5大商社の連結純利益:2015年3月期実績~2021年3月期(会社予想)

出所:各社決算資料より楽天証券経済研究所が作成
注:三井物産は連結純利益では2019年3月期に最高益まで届きませんでした。ただし、連結税前利益で見ると、2019年3月期に最高益を更新しています。

 コロナショックに見舞われた前期(2020年3月期)と今期(2021年3月期)、大手総合商社は、軒並み利益が落ち込みます。それでも、過去の危機(2008年リーマンショックや2015年資源安ショックなど)と比較すると、ダメージが小さく済んでいます。

 上の表で、資源安ショックに見舞われた2016年3月期の純利益との比較ができます。今と同じように原油など資源価格が急落し、大手総合商社は資源権益などで軒並み巨額の減損を計上した時です。

 三菱商事と三井物産はこの時、大幅な赤字に転落しましたが、コロナショックでは黒字を保っています。両社とも、当時より財務内容が改善、収益の安定性も一段と高まったと評価できます。
伊藤忠は、資源安ショックの時も黒字を保ちましたが、コロナショックでも収益の落ち込みがもっとも小さく済んでいます。

 丸紅は、資源事業への依存を小さくするために、近年は非資源事業を積極的に拡大してきました。ところが、前期▲1,974億円の赤字に転落しました。前期は、食糧事業で減損(ガビロン社)を出すなど、非資源事業で損失を出したことが、赤字転落の原因となりました。

 ただし、今期、収益は回復に向かっています。第1四半期(4-6月)に581億円の純利益を稼ぎました。農業・食料品事業や、海外IPP(電力)・水道・ガスなどのインフラ事業が、不況下でも安定的に利益を稼ぎ出しています。世界的な危機が起こっても収益を安定させるように取り組んできた成果が、ようやく出始めたと言えます。

 住友商事は、前期でなく今期に巨額の減損を出すので、回復が遅れます。今期、第1四半期(4-6月期)に▲410億円の最終赤字を計上しました。同社がマダガスカル共和国で推進してきたニッケル採掘・精錬事業で、約550億円の減損を認識したことが主な要因です。ただし、住友商事の不採算事業の減損はこれで終わりとなりません。

 同社は、第2四半期以降も、追加減損が発生し、今期(2021年3月期)通期では、▲1,500億円の最終赤字になるとの予想を発表。マダガスカル・ニッケル事業で追加減損が発生する懸念があることに加え、インド特殊鋼事業・鋼管事業・インドネシア自動車金融事業などで、経済環境次第で減損が発生する可能性があるとしています。