■銘柄間の価格差を利用した取引…「ロング・ショート戦略」

 信用取引の買い建てと売り建てを組み合わせた取引手法に「ロング・ショート戦略」と呼ばれるものがあります。「ロング」は買い建て、「ショート」は売り建てを指しています。

 では、具体的にどうするのかというと、「2つの銘柄間の価格差」に注目し、値上がりが期待できる割安な銘柄を買う(ロング)一方で、値下がりが予想される割高の銘柄を売り(ショート)ます。

 例えば、同じような値動きをする2つの銘柄があったとします。基本的に株価の方向性は同じですが、日々の値動きまで全く同じになるということはありません。相場の状況によっては銘柄間の価格差が拡大・縮小していきます。そしてこの価格差の動きが「ロング・ショート戦略」における仕掛けるポイントになります。

 あまりにも価格差が拡大していれば、「いずれこの価格差は修正されるだろう」と判断するのが自然ですので、そのタイミングで割高な銘柄をショートし、同時に割安な銘柄をロングします。そして、予想通りに価格差が縮小すれば利益になります。

 仮に、株式市場全体の流れを受けて両銘柄とも株価が下がった場合、ロングは損失となりますが、ショートが利益となって損益が相殺されます。反対に株価が上昇した場合でも、ロングの利益とショートの損失が相殺されます。

 つまり、市場全体のトレンドに関係なく、2銘柄の価格差が縮小さえすれば利益が狙えるというわけです。もちろん、予想が外れて両銘柄の価格差が拡大すれば損失が発生します。

 ロング・ショート戦略における銘柄の組み合わせは、日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)といった株価指数間の組み合わせや、銀行や自動車など同業種の銘柄同士の組み合わせなどがある他、企業合併における「合併比率」に注目する組み合わせなどいろいろあります。

■現物取引派でも使える「打診買い」

 現物取引派の方にとって、信用取引は活用する余地がないかというと、実は必ずしもそうとは言い切れません。

 というのも、長期スタイルの現物取引派ほど「いかに安く買うか」が重要になってきます。ですので、相場の下落局面は買いチャンスになります。ただし、株価が下げたところで買いを入れて、思惑通りに株価が反発するかもしれませんが、再び下落を始めてしまうかもしれません。そんな判断に迷ったときに現物取引ではなく、信用取引の買い建てで打診買いをするわけです。

 もちろん、現物取引で打診買いをしても全く問題はないのですが、信用取引には「取引したい金額の30%の保証金で行うことができる」という資金効率のメリットがあります。あくまでも様子見が目的ですから、取引の選択肢を多く用意しておくことが大切です。その後、株価が本格回復した場合には、相場のトレンドが下落から上昇に転じたと判断し、信用建玉を現引で現物株に変えてじっくり保有することも可能になります。

 確かに、信用取引を行うにはその仕組みやルールの理解をはじめ、リスクの管理やコストの計算など面倒なことも多く、ハードルは決して低くはありません。しかし信用取引を賢く活用することで、投資における資金の効率化や、取引のタイミング・選択肢を増やすなど、それ以上に得られるメリットもまた多いと言えます。