信用取引の活用 その2 投資のタイミングや取引の選択肢が増える

■売り建てが可能…株価下落時でも利益が狙える

 信用取引では、株を借りて売るという「売り建て」取引によって、株価が下落している場面でも利益を狙うことができます。

 現物取引派にとって、売り建ての仕組みは意外とイメージしにくかったりしますので、簡単な例を挙げてみます。

 例えば、銘柄Aを1,000株・株価1,000円で売り建てしたとします。この時、銘柄Aを1,000株借りて1,000円で売ったことになります。この時点で売却代金の100万円をいったん手にします。

 その後株価が下落したため、800円で1,000株を買い戻し、そして買い戻した株を返却して取引が手じまわれます。これによって、先ほどの売却代金の100万円と、返済するためにかかった株の買い戻しの費用80万円(800円×1,000株)の差額である20万円が手元に残り、これが利益になります。

 つまり、売り建ては株価が下落するほど買い戻しの費用が安くなって利益が増えるというのがポイントです。いずれにせよ、信用取引によって上げ相場でも下げ相場でも収益のチャンスが増え、取引の自由度も大きくなります。

■信用取引では「回転売買」が可能

 現物取引には「同じ資金を使って同じ銘柄を1日に何回も取引できない」というルールがあり、回転売買ができません。

 例えば、銘柄Aの株を100万円で買い、株価が上がったので、その日のうちに110万円で売却します。そして、同じ日に「まだ株価が上がりそう」ということで、再び売却代金でA株を買おうとしてもルール上できません。A株を買う代金を別に用意する必要があります。

 以前は、信用取引についても、一度信用取引に使った委託保証金をその日のうちに次の取引に使えず、回転売買ができませんでしたが、2013年1月の制度・ルール改正により可能となりました。同じ資金で同一銘柄を繰り返し売買できるのは大きなメリットです。

■株価変動リスクを回避…「優待狙い」「両建て」

 信用取引において、株価が上昇すると思えば買い建て、下落すると思えば売り建てを行うわけですが、この2つを同時に行うとその後の株価がどちらに動いてもそれぞれの損益が相殺され、株価の変動リスクを回避することができます。

 この仕組みを利用した取引手法が「両建て」になります。「ちょっと相場が荒れそうなのでひとまず様子を見たい」といった際に、買い建玉を保有しているのであれば売り建て、売り建玉を保有しているならば買い建てを行って株価変動の影響を中立にします。

 また、「優待取り」とよばれる取引手法も個人投資家の間で人気です。優待取りは雑誌やウェブサイトの株主優待特集などでも紹介されており、認知度が高くなっています。

 優待取りのやり方は、株主優待がもらえる権利付最終日までに現物株の買いと信用取引の売り建ての両方を保有し、権利落ち日以降に現渡しにて決済します。この目的は、株価変動による損失を回避しつつ優待をゲットすることです。もらえる株主優待の価値が取引手数料などのコストを上回るのであれば、お得な取引手法であると言えます。

 もっとも、有名になってしまった手法であるが故に、魅力的な優待銘柄に対して取引が集中し、売り建玉が急増することで逆日歩が発生してしまうという事例も少なからず出てきています。そのため、売り建てについては、制度信用取引ではなく、逆日歩が発生しない一般信用取引で行うなどの工夫が必要です。