「8月は円高」説。その実態は?

 米中対立激化による地政学リスクの高まり、現実に2ケタマイナスの成長率を示された欧米景気の景況感悪化懸念、新型コロナウイルス感染拡大傾向と経済再規制などのマイナス要因。そして、金融政策の追加緩和期待(※)、追加財政政策、ワクチン開発などのプラス要因との綱引き相場が、8月も予想されますが、今年が「8月は円高」になるのかどうか注目です。あるいは、7月後半にユーロやドル/円は大相場となったため8月は大きく動かず、マーケット参加者も夏休み休暇で少なくなり、このまま「夏枯れ相場」になるかもしれません。

※8月は日米欧とも中央銀行理事会は開催されません。毎年注目される米国ジャクソンホール会議はオンラインで開催予定(2020年8月27~28日)

「8月は円高」とよく言われますが、この5年では4回、この10年では6回が円高で、特に円高に偏っているというわけではありません。おそらく円高に動いた時に円安よりも振れ幅が大きかったことから、「8月は円高」の印象が強くなっているのかもしれません。

 ハッサクにとっても、1990年のイラクのクウェート侵攻や2007年のパリバ・ショックは、夏休み休暇中に起こったため、その時の印象が強く、いまだに8月は円高に注意との警戒心を持っています。

 需給面では、8月は外債投資の利金円転(ドル売り・円買い)や、お盆休み前の本邦輸出企業のドル売り予約の増加など、円高に振れやすい偏りが見られます。しかし、ここ数カ月の貿易収支は赤字、また、輸出金額も新型コロナウイルスの影響によって4カ月連続で2ケタの減少となっているため、需給面での影響は低下傾向にあります。