Money Hack1生活と投資

 一口に「不景気」と言っても、個人によって影響が異なるはずだ。

 観光関連や飲食業のビジネスに関わる人など、ビジネスそのものが損なわれたり、雇用が失われたり、そこまでいかなくとも収入が大きく減ったりするような影響を受ける個人がいるはずだ。

 新型コロナで影響を受ける業種には偏りがあり、受ける場合の影響は激甚で、多くの失業を生む可能性が大きい。コロナは雇用の流動化を加速している。

 他方で、コロナからそれほど大きな影響を受けない職種の人もいる。

 業種・職種によって大きな偏りがあるが、全般的な不況で個人の所得にマイナス効果が出やすいことと、雇用が不安定化することの影響が投資にもあるかもしれない。

 当面の状況にかかわらず、将来への備えが必要な事情は多くの勤労者にとって変わらないだろう。一般に、将来に備えた貯蓄・投資はなるべく減らすべきではない。しかし、状況によっては、「現在と将来と、両方の生活縮小を考える」慎重さが必要な人がいるだろう。

 また、コロナによって経済状況が不安定化することを考えると、資産運用にあたって「流動性」が重要になる。

 端的に言って、個人の場合、上場株式や投資信託、個人向け国債のような換金が容易な資産が良く、不動産や生命保険のような換金に時間とコストがかかる運用対象が相対的に良くない、ということだ。

 例えば、仮に、お金に余裕のあるお金持ちが、今が買い場だと思って不動産相場に賭けてみたいのだとしたら、個別のマンション投資よりは、REIT(リート:不動産投資信託)を勧めたい。

Money Hack2投資戦略の大筋は変わらない

 ウィズ・コロナの状況下で、不景気と経済政策のバランスを見極めるといいのだと分かっても、現実にそれを適切に行うことは簡単ではない。

 それでは、ウィズ・コロナ時代は投資自体が難しいかというと、「結論」だけなら、実は案外簡単だ。

 投資では、1)自分にとって適正と思われるリスク分量を、(2)分散投資されたローコストな対象で持つことを、(3)長期的に継続すること、以上にできることがないので、それを続けたらいいというだけのことだ。

 理由は、株式などの資産の価格には、市場参加者の持つ情報と見通し、および彼らの要求するリスク・プレミアムが時々に反映されていると考えられるからだ。市場参加者も時に予想を間違えるが、自分がよりよく予想できないとすると、同じ予想に付き合って、リスク・プレミアムに期待する以上のことができるわけではない。

 人生でも、投資でも、できないことをできると信じて頑張るよりも、「できないことは、できない」という前提を受け入れて、その範囲の中でのベストを行う方が優れた意思決定となる場合が多い。

 具体的な結論を言うと、内外の株式のインデックス・ファンドをリスク資産として持ち、無リスクの資産は個人向け国債の変動金利型10年満期と銀行の預金(一人一行1千万円まで)を組合せて持つようなやり方が多くの人にとって「おおむね最適」くらいの投資戦略になる。

 経済の先行きを読んで、それに賭けようとしないことが肝心だと申し上げておく。

 付け加えると、積立投資を行っている方は、毎回の積立額を投資に増やすことが最適なのであり、この事情がほとんど変化していないはずだから、積立を継続することが最適な戦略だ。

「ドルコスト平均法」自体は別段有利な方法ではなく、単なる気休めに過ぎないのだが、「その時々の最適なリスク量」から考えて積立投資の継続が正当化される場合が多いはずだ。