投資は自我が強いほどうまくいかない

 これから「資産運用で人格を磨くシリーズ」と題して、投資の失敗の原因である一喜一憂の心理を脱するための考え方をお伝えしていきます。今回はその第1回目になります。まずは、このシリーズを始めたいと思った経緯について、お伝えをさせていただければと思います。

 私自身、中学3年(1987年)からいかに自分の資産を増やすかを考え自己投資をし、2000年からは証券マンという立場でいかにお客様の資産を持ち上げるかを考え、様々なやり取りをしてきました。その中で、資産運用でうまくいく人といかない人とでは決定的な違いがあり、その違いは心理にあるという考えに至っています。

 マーケットが上昇して資産が増えると「もっともっと」となり、現金を投じ、結果として高いところを買ってしまい、下落すると怖くなり踏み込めない、もしくはまだ下がると思うと売ってしまう。うまくいかない人は、これを繰り返しているように私には見えます。

「もっともうけたい!」「絶対に減らしたくない!」という思いが強ければ強いほど、一喜一憂は強くなり、より資産を減らしてしまう。うまくいかない人の共通点は、この一喜一憂の心理にあるとみています。

「もうけたい」「減らしたくない」という思いは、自分の利益を考える自我からくるものです。逆に言うと、資産運用で成功するには、いかにこの自我を横に置くことができるかが鍵になってきます。自我を横に置き、「欲」や「恐れ」といった一喜一憂が出てこない境地に、資産運用で成功する世界がある。そうだとしたら、資産運用で成功するには、人格を高めてしまったほうが早いのでは? さらにその考えを深め、逆に、資産運用を通して人格を高めることができる! という思いに至ったのが、このシリーズを始めたいと思ったきっかけです。

 自分の利益を考える自我が強ければ強いほどうまくいかない。人生の構造と資産運用の構造はとても似ているように思います。自分の資産を増やすためだけの運用ではなく、運用を通して自らの人格を高め、結果として資産が増え、人生も充実したものとなる。そのような世界を創ることができたら、素晴らしいなと思っています。