投資家としての視座

 以上を踏まえて、短期ラリー後半を経て、中期警戒、そして長期的活路への視界の広がり方を基本視座として、相場に臨むスタンスを維持しています。

 政策当局は、デフレとの長い戦いになることを覚悟すればこそ、警戒姿勢を保ち、必要な措置を何でも講じると表明しています。1930年代の世界大恐慌(図表11)や、1990年代以降の日本のバブル破裂後遺症の教訓として、経済・市場の危機時には不必要な悪化の阻止を優先すべく、畳み掛けるように政策対応するのが近年の流儀です。

図表11:世界大恐慌時のNYダウ株価指数

出所:NBER(全米経済研究所)

 投資家としての視座は、第1に、コロナ克服のメドが立つまで、政策サポートによってデフレスパイラルのような景気悪化が阻止できるか、第2に、マクロ経済が重くても、コロナ後への適応で、個別の産業・企業のミクロで成長する分野をどう捉えるか、です。また、あえて第3として付け加えたいのは、6月半ばから垣間見たように、相場がいったん調整に入ると、マクロ・テーマ株とミクロのグロース・テーマ株の間の調整、ミクロ間での選別に備えたい、ということです。

 もし先行きを悲観し、経済が底割れする事態を警戒するなら、リスク資産への投資は手控えることが選択肢となるでしょう。しかし、新型コロナウイルスはいずれ克服され、経済もまた3年後をメドに失地回復しているとの道筋を信じるなら、「慎重に前向き」な投資スタンスが妥当と考えます。短期相場は後半戦と心して、中期は反落警戒でも下がれば地道に時間分散してポジション構築、そして長期の展望を計るという私の基本路線に変更はありません。