筆者は、現在、証券会社の社員であると同時に経済評論家であり、ファンドマネージャーではないので、社内のルールに従って「長期保有」するなら個別株に投資できるし、投資信託にも投資できるのだが、自分の仕事(情報発信)と自分の資産運用の関係を考えたときに、どうにも自己資金でリスク資産運用をする気持ちにならない大きな理由の一つとして、先の外国人ファンドマネージャーのケースを見たことがある。「彼と同類の人間にはなりたくない」ということだ。

 また、近年破綻が問題になった、ある現物に投資するファンドを多くの人に勧めていたマネー・アドバイザーは「僕も投資していたので、損をしました。どうして批判されるのか分からない」と言っていたが、自分が投資していることは、不適切なアドバイスの免罪符にはならない。彼は、現在、不動産投資などについても「自分も買っている」ことを前面に出してセールス活動をしているようであり、彼に従った投資家が先般と同様の結果にならないことを祈りたい。

 不動産や外国資産などへの投資を勧めるセールスマンないしは広告塔のような人物の場合、「私は自分が勧める物件に、自分自身が投資しています」と言うのがほぼ定番の台詞(せりふ)になっているが、この種の人の主たる収入は裏でもらう投資物件への紹介手数料であり、自身が投資していることが本当だとしても、その投資自体は一種の広告料のようなものだ。

 一方、市場にコメントしたり、運用の方法を述べたりする仕事では、発言の内容が正しいかどうか(そして、できれば予想が当たるかどうか)が問われており、当人の名誉を賭けているのであって、少々のお金を投資しているか否かで発言の価値を評価しようとすることは、一言で言って「幼稚」だと筆者は思っている。発言自体の当否を判断することができない人の愚論だ。

自分自身の資産運用について

 近年、投資家などから「山崎さん自身の資産はどう運用していますか?」と訊(き)かれて、「ポジショントークを疑われたくないので、リスク資産での運用はしていません。たいしたお金を持っているわけでもないし、銀行預金と郵便貯金とMRF(マネー・リザーブ・ファンド)ですよ」と答えると、がっかりされることがしばしばある。

 外国株のインデックスファンドでも少し持っておく方がいいのかもしれないと思い、現在思案中だ。

 仮にインデックスファンドを自分の資金で買った場合、資産の期待リターンが高まることと、共感してくれる投資家が増えるのではないかと思われることが、期待されるプラス効果だ。

 一方、自分がリスク資産に関わるポジションを持つことで、マーケットについて考える際に、余計な考慮要素が一つ増えることのマイナス効果を考慮する必要があるだろう。自分の投資ポジションを意識せずに済むことは、中立的な立場からマーケットを見る上で役に立っているという実感は少なからずある。

 いずれにせよ、筆者が自己資金で何かに投資した場合は、必ずご報告することをお約束する。