コロナが収束すれば、また日本企業は積極的に自社株買いを開始すると予想

 日本企業は、米国企業と比べると、キャッシュを大切にする傾向がとても強いと言えます。イソップ童話の「ありとキリギリス」の例えが、日米企業文化の違いをよく表しています。日本企業は、夏(好景気)の間、せっせと巣穴(バランスシート)にキャッシュを貯めこみ、来るべき冬(不況や経営危機)に備えてきました。一方、米国企業は、夏の間、バイオリンを弾きながら、自社株買いをどんどんやって、財務を悪化させてしまいました。

 コロナ危機がやってきた今年は、その違いがよくあらわれました。米ボーイングは、自社株買いのやり過ぎで債務超過になっていたところに、コロナ危機が直撃し、経営危機に陥り、米政府に救済を求めました。財務にバッファーの少ない米国企業は、危機が来ると、コストカットのためにどんどん雇用を削減します。

 一方、多くの日本企業は財務良好で、キャッシュを貯めこんでいるので、危機にひんしてすぐに雇用に手を付けることはありません。自社株買いを減らし、配当金を減らし、良好な財務を維持しながら、危機に耐えていくことができる企業が多いといえます。

 多くの日本の上場企業が財務優良で、キャッシュ対策が万全であることを考えると、コロナ危機が去れば、また日本企業は配当を増やし、自社株買いを増やしていく余地があると考えています。

 ところで、自社株買いは、なぜ株主への利益還元になるのでしょうか? 以下、自社株買いの意味をよく理解していない方のために、解説します。