今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「米国」を選択したお客様の割合に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、日本、米国、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13個です。

図:質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「米国」を選択した人の割合 (2019年1月~2020年5月)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2020年5月の調査で、「米国」を選択した人の割合は、61.7%でした。これは、2019年10月の62.1%に次ぐ、近年の高水準です。

 2019年10月といえば、米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)が、“利下げ”を行い、それを織り込みながら、米国株が騰勢を強めていたころです。当然、このころはまだ、Covid-19(現在世界で猛威をふるっている、新型コロナウイルス)は存在していません。5月の調査結果は、このような、米国株が騰勢を強めていた時期の水準に迫ったわけです。

 投資をしてみたい国に米国を選ぶ理由は、いろいろとあると思います。それらを、相対的な理由と、絶対的な理由に分けて考えてみます。“●●に比べれば、米国がよいから”、であれば相対的な理由で、“米国の■■に魅力を感じるから”、であれば絶対的な理由、という具合です。

 2020年5月の米国の状況は、相対・絶対、どちらの理由になり得るのでしょうか?筆者は、後者、つまり、米国自体に何らかの魅力を感じるから、選好されたのだと、考えています。

 それでは、米国自体の魅力とは何でしょうか?一言で言えば、「明るい未来を描きやすいこと」、だと思います。

 例えば、雇用情勢が顕著な例ですが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、2020年4月(5月の前月)、米国は戦後最悪の状況に、追い込まれました。同じ4月、米国国内の石油の消費量も、記録的な急減となりました。まさに、4月は、最悪、という言葉がぴったりあてはまったわけです。

 しかし、今週金曜日に公表される予定の、5月の雇用情勢に関する統計は、4月よりは改善する見込みで、米国内の石油の消費についても、5月は4月よりも回復することが見込まれています。(各種コンセンサス予想、米エネルギー省の見通しより)

 米国の個人の動向と関わりが深い、雇用情勢や石油の消費の最悪期は4月だった、5月になったのだから“最悪期は去った”という理由から、米国に「明るい未来を描きやすく」なっているのだと思います。このため、個人投資家が「今後、投資をしてみたい国(地域)」に、「米国」を選びやすくなっているのだと思います。

 もちろん、米国は、貿易問題の激化、新型コロナウイルスの起源の小競り合い、香港に対する「国家安全法」をめぐる対立など、中国との間に複数の問題を抱えています。また、米国国内で起きた黒人殺害事件を機に、人種問題が噴出し、騒動が大きくなっています。

 米国は今、国内外で、多くの問題を抱えているため、両手放しに「明るい未来を描きやすい」とは言えない面もありますが、市場は、“米国ならば、きっと回復してくれるだろう、最悪期は去った。これ以上、悪くなることはないだろう”などのような、期待が集まっているのだと、考えられます。

 次回以降も、「米国」を選択した個人投資家の皆様の割合に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2020年5月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2020年5月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成