日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之​

「DIがプラスに転じ、投資家の心理が改善」

 今回調査における日経平均の見通しDIの結果は、1カ月先がプラス17.23、3カ月先はプラス4.14となりました。前回調査の結果がそれぞれマイナス29.34、マイナス15.38でしたので、両者とも一気にプラスに転じた格好です。ちなみにDIの値がプラスになるのは2020年になって初めてです。

 回答の内訳グラフを見ても、1カ月・3カ月ともに前回調査で44割近く占めていた弱気派が減少しており、強気派もしくは中立派へと流れていきました。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

 もちろん、調査期間中(5月25日~27日)の日経平均が大きく上昇していたことも、今回のDIの結果に影響していたと思われますが、少なくとも投資家の心理は改善していると言えます。

 とはいえ、5月の中国全人代で採決された法案(国家安全法)をめぐる米中対立や、急ピッチな株価上昇による相場の過熱感など、株式市場を取り巻く環境は不安要素を抱えているのも事実です。それでも日経平均が2万2,000円台に乗せるなど、6月相場は良好なスタートで、「相場は不安の崖を這い上がる」という相場格言を地で行く展開となっています。

 こうした株高の背景には、売り方の買い戻しや、個人投資家の参入などの需給面のほか、抗コロナウイルスのワクチン・治療薬関連や公衆衛生関連、リモートワークや巣ごもりといった、生活・社会のデジタルシフトへの変化と、それらを支えるITや半導体などの技術関連など、物色の対象が一定数存在していることなどが後押ししています。さらに、割安株や出遅れ株へと物色が広がっていく展開を見せればこの流れがしばらく続くことも考えられます。

 また、株式投資において利益が狙いやすいのはトレンドが発生している局面ですので、「行き過ぎた株価は後で修正されるのだから、行けるところまで行ってしまえ」というムードもあるのかもしれません。

 その一方で、株価上昇に伴って「株式市場が描いている未来」と「実際の現実」とのあいだのギャップも確実に広がっています。コロナウイルスの感染再拡大や実体経済回復のスピード感、米中摩擦の悪化などには配慮する必要があります。

 特に、米中関係については、いわゆる「米中第一段階の合意」の履行や、中国企業への規制、米国金融市場での規制など、これまでの延長線上にある制裁の行方に加え、香港に与えられている優遇措置(渡航・関税・通貨)への規制・撤廃という選択肢が加わっています。

 香港の国際的な経済地位の低下は米中双方にとって望ましい展開ではありませんが、昨年の関税引上げ局面では、その望ましくない展開が実現してしまった経緯があるため注意です。

 そのため、いずれ株価上昇の一服と調整が訪れることが予想されますが、「利益確定の売りをある程度こなして再び上昇していく」のか、「中長期的な下落の入り口」なのかを慎重に見極めていくことが今後の焦点になります。