コロナ相場の予測が難しい理由

 本稿執筆時点で、新型コロナウイルスの感染症(以下「コロナ」と略称する)が猛威を振るっている。世界の人々の生活と経済に甚大な影響が及んでいるが、資本市場にも大きな影響が表れており、内外の株価は大幅に下落して、定義上も「弱気相場」に入った(高値から2割安が一般的な定義だ)。

 筆者は、ここのところ、「コロナを踏まえて、(1)今後の相場展開の見通しと、(2)個人が資産運用をどうしたらいいか、について教えて下さい」といった取材やコメント、原稿の依頼を頂くことが多い。

 率直に言って、(1)は大変難しい質問だ。

 難しさの理由は、一つにはコロナ自体に未知の要素が多くあることと、もう一つには、過去のパターンが当てはまらないことだ。コロナ・ショックが、金融的なバブル崩壊が実物経済に悪影響を及ぼした、リーマン・ショック(2008年)、ネットバブル崩壊(2000年)、日本のバブル崩壊(1990年代)のような典型的な経済サイクルに準じて発生したものではなく、新しい感染症の登場がいきなり実物経済に急ブレーキを掛けたためだ。

 過去のバブルと経済循環のロジックから考えると、コロナによる不況が金融システムの危機に及んで、リーマン・ショック的な信用収縮メカニズムをさらに発生させるか否かが大きな問題であり、こうした問題の有無で将来の経済状況は大きく異なる。

 政策的に手を打たなければ、特に海外の大手銀行にも経営破たんが起こることは不可避とも思えるが、既にリーマン・ショック後を大きく上回るような金融と財政の両政策が発動されていて、今後に追加される政策も含めて、その効果を読むことが難しい。コロナの経済への悪影響が異例である一方、経済政策の大きさも未曾有のものなので、帰趨(きすう)を見極めにくい。

 もちろん、この要素の他に、コロナをめぐる、ワクチンや治療薬の開発の行方、ウイルスに対する免疫の有効性、ウイルスの変異や再流行の可能性、など医学的な不確実性が存在する。

 少し考えてみただけで、やっぱり難しい。

 おそらく、こと相場だけに限っても、先を読むことが難しいと考える専門家が多いだろう。