運用方針を考えて行き当たる「意外性」

 ところが、考えるべき問題が(2)個人が資産運用をどうしたらいいかに移ると、答えが何ともシンプルなのだ。理屈は分かっているつもりなのだが、(1)相場見通しの難しさと、(2)個人に適切な運用方針、との二つの問に対する答えの質感のあまりのギャップに、自分でも驚く。

 (2)に対する典型的な答えは、以下のようなものだ。

「生活費に必要なお金を別途確保して、悪いケースで3分の1程度の損失額を想定して許容できる範囲内の額をリスク資産に投資しましょう。この中身はおおむね外国株のインデックスファンド6割と国内株のインデックスファンド4割がいいでしょう。リスクを取りたくない資金は個人向け国債変動金利型10年満期と銀行の普通預金で運用しておくといいでしょう」。

 以下、質問者と筆者(山崎)のやり取りを想定すると以下のような感じだ。

質問者「今回の相場下落で、かなり含み損が出ているのですが、損切りしなくていいのでしょうか?」
山崎「今の時点でリスクの額が過大でなければ、そのままで構いません。それに、長期投資に損切りという考え方を持ち込むことは不適切です」

質問者「株価が下がったので、リスク資産を買増するチャンスではないでしょうか?」
山崎「特に有利不利はありません。余裕があるなら、追加投資してもいいでしょう」

質問者「内外の株式の比率とか、リバランスの必要はありませんか?」
山崎「よほどのバランスの崩れがない場合は、大差ないので面倒ではないですか。リバランスが大事だと言うのは、多くの場合マネーアドバイザーが自分の仕事を作るためのポジショントークです」

質問者「今はリスクが大きいので、投資を休んだほうがいいですか?」
山崎「前からリスクはあったので、事情は変わっていません。そのままでいいでしょう」

質問者「積み立て投資を一時休んで様子を見ようかと思うのですが、不適切ですか?」
山崎「たぶん不適切です。将来に備える必要性は何も変わっていないはずですから」

質問者「結局、だいたいにおいて、投資は今まで通り、そのままでいい、ということですか?」
山崎「そうです。一言で言うと『そのままでいい』ということです」

 いささか、サービス精神に欠けた答え方かもしれないが、以上のように答えることになる。「コロナ前」、「コロナ中」、「コロナ後」で投資方針は変わらないのだ。