「ちゃぶ台返し」の懸念3点
したがって、基本的な相場のムードは良好と捉えて良いのですが、「ちゃぶ台返し」の懸念が複数存在しており、株価の向きが3×1ラインや、2×1ラインへと急変してもおかしくない点には注意です。
一つ目の懸念は、足元の市場が好感している経済活動再開に向けた動きです。世界各地の状況を見ると、ウイルス感染の抑制やピークアウトに伴って実施されるところがある一方で、根拠に乏しい見切り発車や経済停止懸念、国民の不満の圧力などに押されて再開されているところなどが混在しています。日本国内でも今週14日をメドに緊急事態宣言の一部解除の判断がなされる予定ですが、国内外で感染の再拡大リスクと隣り合わせの面があります。
もちろん、感染の再拡大自体は市場もすでに想定済みで、視点は「アフター(After)・コロナ」から「ウィズ(With)・コロナ」へと変わりつつありますが、新興国はまだ感染拡大中の地域が多い他、先進国でも、次の感染拡大に向けた体制強化や準備、支援策をどこまで整えているかについて状況はまちまちです。まだ対応力が試されている段階のため、本格的な経済活動再開までの道のりは株価の上昇ピッチが示しているほど早くはないのかもしれません。
続いて二つ目の懸念は米中関係です。海外株式市場では、国内連休期間中に米中対立への警戒が浮上した場面がありました。昨年の連休明けは、米中摩擦の激化によって株価が下落トレンドへとかじを切りましたが、今年はひとまず波乱の取引再開は回避できています。とはいえ、米中摩擦の再燃は今後の相場の重しとなる可能性があります。今週は15日(金)に米中で経済指標の発表が相次ぎます。
今回の米中摩擦は、コロナ禍をきっかけに米国側からの動きが目立っているのが特徴です。主なポイントは、(1)「11月に控える米大統領選挙をにらんだ動き」という政治的なアピール、(2)「中国やWHOが初期対応を誤り、世界で感染拡大を招いた」、「中国の研究所からウイルスが漏れ出た」というコロナウイルスをめぐる責任や原因の主張、そして、(3)「制裁関税の発動」や、「サプライチェーンから中国を外すための補助金」といった対応・報復措置の検討の3点です。
中国は一足早く経済活動の再開へと歩みを進めたわけですが、実際に米国から(3)の報復措置が発動されてしまえばかなりのブレーキになりますし、中国だけでなく、米国自身や世界経済も無傷で済みません。そうなれば株価の「二番底」の懸念も現実味を帯びてきます。