直近までの相場の良好なムードや、積み上っている「裁定売り残」の買い戻しという需給要因に加え、リクツの上でも日経平均が2万1,000円あたりまで上昇する可能性は十分にあります。

 実際に、株価指標を見ていくと、8日(金)時点の日経平均のPER(株価収益率)は16.84倍、PBR(株価純資産倍率)は0.96倍でした。PERについては、日経平均が2万4,000円台をつけていた1月中旬頃のPERが14倍台でしたので、かなり割高になっている印象です。ただ、足元の相場は新型コロナウイルスの影響で企業の「稼ぐチカラ(事業価値)」が見えにくくなっているため、企業の資産価値を対象とするPBRの方が有効と考えられます。

 そのPBRについては、いわゆる「1倍割れ」となっています。PBRの1倍割れは株価が資産価値を下回り、割安であることを意味します。現時点で0.96倍のPBRが1倍の水準まで日経平均が戻すのであれば、計算上では2万1,000円ぐらいまで上昇することになります。ただし、業績が赤字になったり、保有有価証券などが株安や円高で目減りしたりすれば、資産価値そのものが減少してしまいますので、過信するのは禁物です。

 そのため、このままの勢いで2万1,000円台をトライするには、思ったよりも買いのエネルギーが必要になるのかもしれません。目先の目標である4月30日の直近高値(2万365円)超えは、3月6日~9日に空けた「窓埋め」トライでもあるからです。窓埋めを完了するには日経平均が2万749円まで上昇する必要があります。

 したがって、25日と75日移動平均線に挟まれた範囲が目先の想定レンジとなりそうです。これまで指摘してきた日柄調整がもうしばらく続くことになるわけですが、調整の出口も見えつつあります。