爆速計画!でもワクチン開発は失敗も多い

 次にワクチンの話題に移ります。トランプ米大統領は「オペレーション・ワープ・スピード(爆速計画)」で、2020年の秋までに3億回分のワクチンを用意すると言っています。これは楽観的な予想です。

 ただ、新型コロナウイルス患者のケアの最前線で、リスクにさらされている医師や看護師に対し、秋までに百万回分の未承認のワクチンを用意し、試験的にワクチンを投与することは可能かもしれません。その場合、ワクチンの生産キャパシティーなどから考えて、少なくとも2社以上のワクチン・メーカーがこの試みに参加することが必要になると思います。

 しかし、ワクチンの成功確率は極めて低く、とりわけmRNA(メッセンジャーRNA)技術に依拠したワクチンは安全性こそ高いものの、効果は薄いという可能性もあります。そのため、mRNAベースのワクチン候補が「全滅」するシナリオも考えておく必要があるのです。

米国の新型コロナウイルスワクチン開発

臨床
試験
開始日
企業名 タイプ
3月上旬 モデルナ(MRNA) mRNA
4月上旬 バイオンテック(BNTX)/ファイザー(PFE) mRNA
4月上旬 イノヴィオ(INO) mRNA
4月上旬 シノヴァック mRNA
4月上旬 ウーハン・インスティチュート/シノファーム 非RNA
4月下旬 オックスフォード大学 mRNA
5月上旬 インペリアル・カレッジ mRNA
5月中旬 ノヴァヴァックス(NVAX) 非RNA
6月上旬 キュアヴァック mRNA
7月上旬 サノフィ/グラクソスミスクライン 非RNA
7月上旬 ヴァックスアート(VXRT) 非RNA
8月上旬 アルティミューン 非RNA
9月上旬 ジョンソン&ジョンソン(JNJ) mRNA

 なおワクチンを大量に製造できるキャパシティーは払底しており、米国では片手で数えられるほどしか工場は存在しません。

 そこで製造下請けの存在が重要になります。エマージェント・バイオソリューションズ(EBS)ノヴァヴァックス、ヴァックスアート、ジョンソン&ジョンソンの臨床試験向けのワクチン製造を担当する契約を獲得しています。