バイオテクノロジーだけが頼みの綱
不安を除去する方法はただ一つ。それはバイオテクノロジーの力に頼るということです。
治療薬では、米バイオ医薬品メーカーのギリアド・サイエンシズ(GILD)の抗ウイルス薬レムデシビルが先日、FDA(米食品医薬品局)からEUA(緊急使用承認)を獲得しました。新型コロナウイルスの第1報が米国にもたらされてから3カ月で承認となったので、これは極めて速いスピードでしょう。
そして、供給される最初の150万瓶はギリアドからの「寄付」になります。つまり無料です。その配分に関しては、政府が100%の発言権を持っています。
レムデシビルは「1日1瓶、10日間にわたり点滴で投与」という処方です。つまり15万人分だけが無料ということです。いまニューヨークだけで7万人が新型コロナウイルスで入院しているわけですから、全米に入院している新型コロナウイルス患者に処方すると、もう残らない計算になります。
ところが、レムデシビルは10日間ではなく、5日間の投与でも効果は十分かもしれないことが、ギリアド社が新型コロナウイルス患者に行った臨床試験で明らかになったと発表されました。そこで「1日1瓶、5日間にわたり点滴で投与」という処方に改めれば、30万人にレムデシビルが処方される計算になるわけです。ただし、臨床試験の段階であるため、まだ流動的です。
さて、最初の150万瓶は無料ですが、その後、レムデシビルは有料になることが予想されます。米国の独立コンサルタントは「たぶん患者当たり45万円前後になるだろう」と試算しています。つまり、ギリアドは全くのタダ働きではなく、レムデシビルから売り上げを出すことも可能というわけです。ただし、それは来年以降も新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)が続けば…という話です。新型コロナウイルスは少なくとも2~3年くらい蔓延すると予想するのが、現状では自然でしょう。