東京エレクトロン
1.2020年3月期4Qは1%増収、8%営業減益
東京エレクトロンの2020年3月期4Q(2020年1-3月期)は、売上高3,233億9,000万円(前年比1.4%増)、営業利益701億2,800万円(同8.2%減)となりました。
前3Q(2019年10-12月期)決算発表時点での2020年3月期通期会社側業績予想は、売上高1兆1,100億円、営業利益2,250億円でしたが、実績はこれを上回りました。中国で新型コロナウイルスの影響による検収の遅れ(売上高と利益の下方修正要因)がありましたが、他の地域での案件を前倒しで納入することに努めた結果、会社予想を上回ることが出来ました。
地域別売上高の前3Qから前4Qへの変化を見ると、日本、韓国、台湾向けが増加しました。台湾向けはロジックファウンドリ(TSMCなどの半導体受託製造業者)向けの増加、日本、韓国向けはNAND型フラッシュメモリ投資の再開によるものと思われます。北米向けは減少しましたが、MPU向けの減少が一時的にあったと思われます。中国向けも減少しましたが、メモリ向けが新型コロナウイルスの影響を受けたと思われます。ただし、北米向け、中国向けともに売り上げ水準は高い状態が続いています。
アプリケーション別に前3Qから前4Qへの売上高の変化を見ると、DRAM向け、不揮発性メモリ(主にNAND)向けは減少しました。ただし、不揮発性メモリ向けは減少しながらも高水準を保っており、投資再開の動きが続いていると思われます。DRAMも2020年後半には投資再開へ動くと思われます。ロジックファウンドリとロジック・その他(MPU向けなど)は増加しました。
グラフ5を見ると、東京エレクトロンの業績は2020年3月期1Q(2019年4-6月期)を底として着実に回復しています。
表6 東京エレクトロンの業績
表7 東京エレクトロン:半導体製造装置の地域別売上高
表8 半導体製造装置のアプリケーション別売上構成比と売上高(新規装置のみ)
表9 東京エレクトロン:半導体製造装置(新規装置)の製品別売上高
グラフ5 東京エレクトロンの半導体・FPD製造装置販売高
2.会社側は2021年3月期業績予想を開示せず。楽天証券は業績再成長予想を維持。
会社側は、今期2021年3月期の半導体設備投資と東京エレクトロンの業績に対する(新型コロナウイルス禍の中での)世界経済の影響を精査したいという理由から、2021年3月期通期業績予想を開示しませんでした。
ただし、4月30日に開催された2020年3月期決算説明会(WEB説明会)での会社側説明によれば、新型コロナウイルスの影響は、製造装置の生産体制、部品調達でも、顧客への装置出荷、部品供給体制でも問題がないか軽微であり、顧客工場における装置設置や顧客サポートは現地従業員と駐在員とで行っており問題ないとしています。半導体需要も、データセンターと5Gスマホ向け中心に旺盛であり、主要半導体メーカーの設備投資計画に今のところ変更はないとしています。
そのため、特に2020年後半から2021年にかけて、ロジック、メモリともに設備投資が増えていく再成長ステージが到来するというのが会社側の現時点での見方です。
楽天証券では、半導体設備投資は新型コロナウイルス禍の中でも既に増加局面にあり、半導体製造工程の前工程の有力企業である東京エレクトロンの業績も再成長局面に入っていると判断しています。主な設備投資ドライバーは、データセンター用高性能サーバー(に使う高性能CPUとメモリ)、高性能パソコン、5Gスマホです。半導体関連の最終製品(5Gスマホ、高性能パソコン、データセンター)の需要地として最も重要な国は中国で、次がアメリカと日本になります。
この見方に従って、前回予想した2021年3月期、2022年3月期業績予想を維持します。即ち、2021年3月期は、売上高1兆3,000億円(前年比15.3%増)、営業利益3,100億円(同30.6%増)を、2022年3月期は、売上高1兆4,700億円(同13.1%増)、営業利益3,800億円(同22.6%増)を維持します。
3.今後6~12カ月間の目標株価は3万4,000円を維持する
今後6~12カ月間の東京エレクトロンの目標株価は、前回の3万4,000円を維持します。前回同様、楽天証券の2021年3月期予想EPS 1,530.3円に想定PER20~25倍を当てはめました。引き続き投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄:アドバンテスト(6857) 、レーザーテック(6920)、東京エレクトロン(8035)