毎週金曜日夕方掲載

本レポートに掲載した銘柄:アドバンテスト(6857)レーザーテック(6920)東京エレクトロン(8035)

アドバンテスト

1.2020年3月期4Qは7%増収、14%営業増益

 アドバンテストの2020年3月期4Q(以下前4Q、2020年1-3月期)は、売上高682億2,600万円(前年比6.7%増)、営業利益115億7,700万円(同13.5%増)となりました。新型コロナウイルス感染症の影響を半導体設備投資の再成長と企業努力で克服した決算でした。

表1 アドバンテストの業績

株価    5,270円(2020/4/30)
発行済み株数    198,415千株
時価総額    1,045,647百万円(2020/4/30)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成 
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。

2.テスタ受注は順調に増加

 半導体テスタの受注高は、SoCテスタ(非メモリ・テスタ)が、前2Q(2019年7-9月期)333億円、前3Q315億円、前4Q329億円と堅調に推移しました。5G、HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング、高性能サーバーや高性能パソコン)向けが堅調でした。また、メモリ・テスタ受注高は、前2Q98億円、前3Q159億円、前4Q193億円と順調に伸びました。足元でのDRAM、NAND型フラッシュメモリの生産増加と先行きの生産増加見通しが寄与しました。

 新規事業である「システムレベル・テスト」(半導体を組み込んだシステム全体のテスト)の受注も伸びました。この事業が入る「サービス他」の受注高は、前2Q84億円、前3Q159億円、前4Q260億円と大きく伸びていますが、これはシステムレベル・テストと保守契約受注の増加によるものです。

 この結果、前4Qの全社受注高は907億円(今3Q比24.4%増)となり過去最高を更新しました。2020年3月末受注残高は910億円(後述のEssai買収による受注残増加分42億円を除くと868億円)となり、2019年12月末643億円から大きく伸びました。

 なお、前4Q受注高の地域別を見ると、中国向け224億円が最も大きく、台湾向け197億円、韓国向け179億円が続く形になっています。中国向けはメモリ・テスタの受注が伸びたほか、スマホ関連向けが増加しました。

 事業別売上高を見ると、SoCテスタ売上高が前2Q418億円、前3Q379億円、前4Q305億円と減少しましたが、これは概ね会社予想に沿ったものでした。一方、メモリ・テスタ売上高は前2Q102億円、前3Q114億円、前4Q145億円と増加しました。

 また、サービス他売上高が前2Q103億円、前3Q105億円、前4Q131億円と増加していますが、これは今年1月に買収したアメリカのEssai(イッサイ)社の寄与によるものです。Essaiはテスター用ソケットの会社で、HPC向けソケットが増加しています。

 これらの結果、2020年3月期通期は、売上高2,758億9,400万円(前年比2.3%減)、営業利益587億800万円(同9.2%減)となり、前3Q決算時の会社予想業績、売上高2,700億円、営業利益560億円を超過しました。半導体設備投資の端境期としては高水準な業績となりました。

グラフ1 アドバンテストの半導体テスタ受注動向

単位:億円、出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ2 アドバンテストの半導体テスタ売上動向

単位:億円、出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ3 アドバンテストの全社受注高

単位:億円、出所:会社資料より楽天証券作成、注:2000年3月期1Qから2002年3月期4Qまでは会社資料を基に楽天証券推定

表2 アドバンテストの事業別売上高

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成。
注:四捨五入のため合計が合わない場合がある。

3.2021年3月期1Q会社予想も高水準

 会社側では新型コロナウイルスによる先行きの不透明感が強いため、2021年3月期通期の業績予想を開示せず、代わりに2021年3月期1Q業績予想を開示しました。それによれば、2021年3月期1Q(以下今1Q)会社予想は、売上高700億円(前年比5.8%増)、営業利益130億円(同14.2%減)となります。また、今1Q受注高予想は620億円(同5.9%減)で前4Q907億円から大きく減る予想になっています。

 会社側によれば、事業別売上高ではSoCテスタとメカトロニクス(ハンドラー(半導体デバイスの搬送機)などのテスタ周辺機器等)が前4Q比で減少する見込みですが、メモリ・テスタとサービス他は前4Q比で増加する見込みです。

 この今1Q会社予想を評価すると、売上高700億円は前4Q682億円よりも多く、2020年3月期の四半期売上高の中で最大だった前2Qの716億円に近い数字であり高水準です。営業利益は前4Qから回復する予想になります。

 足元では在宅勤務や在宅学習で使う高性能パソコンや自宅と企業や学校をつなぐためのデータセンターを動かす高性能サーバーの需要が世界的に増加しており、これに伴って高性能CPUとメモリ需要が増えています。これらのことを考えると、アドバンテストでは今1Qから業績の伸びが始まり、2021年3月期も好業績が期待できるというのが私の考え方です。そのため、2021年3月期の楽天証券予想は、前回の売上高3,300億円(前年比19.6%増)、営業利益810億円(同38.0%増)を維持します。

 ただし、リスクもあります。新型コロナウイルス前から不調に陥っていた自動車向け、新型コロナウイルスの影響を受けている産業用機器向けの半導体需要の減少が予想されます。もっとも、自動車向け、産業用機器向けは最先端半導体が少ないため、テスタ需要には大きな影響は考えにくいと思われます。

 また、会社側によれば今1Qから一部の部材の調達に支障が生じている模様です。これは現在解決中ということなので、成果に期待したいと思います。

4.今後6~12カ月間の目標株価を9,000円から8,000円に引き下げる。引き続き中長期での投資妙味を感じる。

 今後6~12カ月間のアドバンテストの目標株価を、前回の9,000円から今回は8,000円に引き下げます。楽天証券の2021年3月期予想EPS 329.1円に想定PER20~25倍を当てはめました。新型コロナウイルスのリスクを考慮しました。引き続き、中長期での投資妙味を感じます。

レーザーテック

1.2020年6月期3Qは22%増収、48%営業増益

 レーザーテックの2020年6月期3Q(2020年1-3月期)は、売上高56億5,300万円(前年比21.8%増)、営業利益8億7,600万円(同48.0%増)となりました。レーザーテックは四半期ごとの業績の振れが大きいため、今3Qは今2Qに比べ大幅減収減益となりましたが、前年比では大幅増益となりました。

 今3Q売上高の中身を見ると、今2Qに引き続き半導体関連装置が伸びました。半導体関連装置売上高は35億3,700万円(前年比64.8%増)となりました。例年3Qは製品売上が少ない四半期となりますが、1年前に比べると売上高が大きく増えました。EUV用マスク欠陥検査装置(EUV露光装置に使うフォトマスク(シリコンウェハに描き込む回路図を描いた原版)の検査装置)などの主力製品が伸びたと思われます。また、製品売上高の増加に伴って保守・サービス等の「サービス」が傾向的に伸びています。今3Qのサービス売上高は16億2,500万円(同38.7%増)と好調でした。

 今3Qの受注高は245億8,800万円(前年比6.0倍)となりました。2018年6月期から受注が急増していますが、今3Q受注高は四半期ベースで過去最高だった今2Qの305億5,000万円に次ぐ水準となりました。最先端ロジック半導体の製造工程では7ナノ(2018年から)、5ナノ(2020年から)へ微細化が進み、それに伴って2019年からEUV露光装置の半導体製造ラインへの導入が始まりました。更に2022年には3ナノ半導体の量産が始まると予想されます。この大きなトレンドに沿って、レーザーテックでは特にEUV用マスク欠陥検査装置などのEUV関連製品の受注が伸びています。

 この結果、今1-3Q累計受注高は648億4,400万円(前年比2.1倍)へ大きく伸びました。今3Q末受注残高は958億400万円となり、今2Q末の768億6,800万円から更に増加しました。

表3 レーザーテックの業績

株価    7,210円(2020/4/30)
発行済み株数    90,178千株
時価総額    650,183百万円(2020/4/30)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社の所有者に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

グラフ4 レーザーテックの全社受注高

単位:百万円、四半期ベース、出所:会社資料より楽天証券作成

2.2020年6月期会社予想は変更なし。楽天証券は2021年6月期、2022年6月期業績予想を上方修正する。

 会社側は2020年6月期業績予想、売上高400億円(前年比39.0%増)、営業利益140億円(同76.3%増)を維持しました。ただし、品目別売上高の今期予想は修正されており、半導体関連装置は台湾の顧客の投資が強いため、前回予想の307億円が320億円に増額されました。その他はフラットパネルディスプレイ(FPD)向けの中国向けの納入が遅れているため30億円が25億円に減額、サービスはサービス開始提供の後づれで63億円が55億円に減額となりました(表4)。

 また、2020年6月期通期受注高の会社予想は、前回予想の700億円から850億円に上方修正されました(このうち半導体関連装置は605億円→760億円)。今期末受注残高の会社予想は、前回予想の855億円から1005億円に上方修正されました(同じく818億円→960億円)(表5)。

 楽天証券では、前回2020年3月6日付け楽天証券投資WEEKLYで、レーザーテックの2020年6月期業績予想をやや下方修正しました(売上高400億円、営業利益140億円を、各々380億円、130億円に下方修正)。新型コロナウイルスの影響による製品検収(装置が顧客工場で動くか検査した後売り上げに計上する)の遅れを懸念したためです。今3Qまでは製品検収の遅れがあったようですが、通期では心配するほどではないようなので、楽天証券の今回の2020年6月期業績予想は会社予想と同じ水準に戻します。

 レーザーテックのマスク欠陥検査装置は納期がおおむね6カ月から2年かかると思われるため、今期の新規受注は主に2021年6月期、2022年6月期の業績に反映されると予想されます。増加が続く受注高、受注残高を織り込んで、2021年6月期、2022年6月期の楽天証券予想業績を上方修正します。2021年6月期は、前回の売上高550億円、営業利益210億円を、売上高560億円、営業利益220億円に、2022年6月期は前回の売上高750億円、営業利益300億円を、売上高820億円、営業利益340億円に上方修正します。好調な業績が予想されます。

表4 レーザーテックの売上高内訳:通期ベース

単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成。

表5 レーザーテックの受注高、受注残高内訳:通期ベース

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成。
注:端数処理のため合計が合わない場合がある。

3.今後6~12カ月の目標株価を1万円とする

 今後6~12カ月間の目標株価を1万円とし、前回の8,500円から引き上げます。2022年6月期楽天証券予想EPS 268.4円に想定PER35~40倍を当てはめました。今後微細化が3ナノ(2022年から)に進展することによって、EUV用マスク欠陥検査装置、EUV用マスクブランクス欠陥検査装置(マスクブランクスはフォトマスクの材料)の受注増加が中長期にわたって続くと予想しました。そのため、高成長に相応した高いPERが実現すると予想しました。

 引き続き投資妙味を感じます。

東京エレクトロン

1.2020年3月期4Qは1%増収、8%営業減益

 東京エレクトロンの2020年3月期4Q(2020年1-3月期)は、売上高3,233億9,000万円(前年比1.4%増)、営業利益701億2,800万円(同8.2%減)となりました。

 前3Q(2019年10-12月期)決算発表時点での2020年3月期通期会社側業績予想は、売上高1兆1,100億円、営業利益2,250億円でしたが、実績はこれを上回りました。中国で新型コロナウイルスの影響による検収の遅れ(売上高と利益の下方修正要因)がありましたが、他の地域での案件を前倒しで納入することに努めた結果、会社予想を上回ることが出来ました。

 地域別売上高の前3Qから前4Qへの変化を見ると、日本、韓国、台湾向けが増加しました。台湾向けはロジックファウンドリ(TSMCなどの半導体受託製造業者)向けの増加、日本、韓国向けはNAND型フラッシュメモリ投資の再開によるものと思われます。北米向けは減少しましたが、MPU向けの減少が一時的にあったと思われます。中国向けも減少しましたが、メモリ向けが新型コロナウイルスの影響を受けたと思われます。ただし、北米向け、中国向けともに売り上げ水準は高い状態が続いています。

 アプリケーション別に前3Qから前4Qへの売上高の変化を見ると、DRAM向け、不揮発性メモリ(主にNAND)向けは減少しました。ただし、不揮発性メモリ向けは減少しながらも高水準を保っており、投資再開の動きが続いていると思われます。DRAMも2020年後半には投資再開へ動くと思われます。ロジックファウンドリとロジック・その他(MPU向けなど)は増加しました。

 グラフ5を見ると、東京エレクトロンの業績は2020年3月期1Q(2019年4-6月期)を底として着実に回復しています。

表6 東京エレクトロンの業績

株価    22,940円(2020/4/30)
発行済み株数    155,525千株
時価総額    3,567,744百万円(2020/4/30) 
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

表7 東京エレクトロン:半導体製造装置の地域別売上高

単位:億円 
出所:会社資料より楽天証券作成。
注:端数処理の関係で合計が合わない場合がある。

表8 半導体製造装置のアプリケーション別売上構成比と売上高(新規装置のみ)

単位:%、億円
出所:会社資料より楽天証券作成。
注:売上高は会社公表の売上構成比から楽天証券計算。

表9 東京エレクトロン:半導体製造装置(新規装置)の製品別売上高

単位:億円、%
出所:2020年3月期決算説明会資料記載の構成比より楽天証券試算。

 

グラフ5 東京エレクトロンの半導体・FPD製造装置販売高

単位:億円、四半期ベース、出所:会社資料より楽天証券作成

2.会社側は2021年3月期業績予想を開示せず。楽天証券は業績再成長予想を維持。

 会社側は、今期2021年3月期の半導体設備投資と東京エレクトロンの業績に対する(新型コロナウイルス禍の中での)世界経済の影響を精査したいという理由から、2021年3月期通期業績予想を開示しませんでした。

 ただし、4月30日に開催された2020年3月期決算説明会(WEB説明会)での会社側説明によれば、新型コロナウイルスの影響は、製造装置の生産体制、部品調達でも、顧客への装置出荷、部品供給体制でも問題がないか軽微であり、顧客工場における装置設置や顧客サポートは現地従業員と駐在員とで行っており問題ないとしています。半導体需要も、データセンターと5Gスマホ向け中心に旺盛であり、主要半導体メーカーの設備投資計画に今のところ変更はないとしています。

 そのため、特に2020年後半から2021年にかけて、ロジック、メモリともに設備投資が増えていく再成長ステージが到来するというのが会社側の現時点での見方です。

 楽天証券では、半導体設備投資は新型コロナウイルス禍の中でも既に増加局面にあり、半導体製造工程の前工程の有力企業である東京エレクトロンの業績も再成長局面に入っていると判断しています。主な設備投資ドライバーは、データセンター用高性能サーバー(に使う高性能CPUとメモリ)、高性能パソコン、5Gスマホです。半導体関連の最終製品(5Gスマホ、高性能パソコン、データセンター)の需要地として最も重要な国は中国で、次がアメリカと日本になります。

 この見方に従って、前回予想した2021年3月期、2022年3月期業績予想を維持します。即ち、2021年3月期は、売上高1兆3,000億円(前年比15.3%増)、営業利益3,100億円(同30.6%増)を、2022年3月期は、売上高1兆4,700億円(同13.1%増)、営業利益3,800億円(同22.6%増)を維持します。

3.今後6~12カ月間の目標株価は3万4,000円を維持する

 今後6~12カ月間の東京エレクトロンの目標株価は、前回の3万4,000円を維持します。前回同様、楽天証券の2021年3月期予想EPS 1,530.3円に想定PER20~25倍を当てはめました。引き続き投資妙味を感じます。

本レポートに掲載した銘柄:アドバンテスト(6857)レーザーテック(6920)東京エレクトロン(8035)