レーザーテック

1.2020年6月期3Qは22%増収、48%営業増益

 レーザーテックの2020年6月期3Q(2020年1-3月期)は、売上高56億5,300万円(前年比21.8%増)、営業利益8億7,600万円(同48.0%増)となりました。レーザーテックは四半期ごとの業績の振れが大きいため、今3Qは今2Qに比べ大幅減収減益となりましたが、前年比では大幅増益となりました。

 今3Q売上高の中身を見ると、今2Qに引き続き半導体関連装置が伸びました。半導体関連装置売上高は35億3,700万円(前年比64.8%増)となりました。例年3Qは製品売上が少ない四半期となりますが、1年前に比べると売上高が大きく増えました。EUV用マスク欠陥検査装置(EUV露光装置に使うフォトマスク(シリコンウェハに描き込む回路図を描いた原版)の検査装置)などの主力製品が伸びたと思われます。また、製品売上高の増加に伴って保守・サービス等の「サービス」が傾向的に伸びています。今3Qのサービス売上高は16億2,500万円(同38.7%増)と好調でした。

 今3Qの受注高は245億8,800万円(前年比6.0倍)となりました。2018年6月期から受注が急増していますが、今3Q受注高は四半期ベースで過去最高だった今2Qの305億5,000万円に次ぐ水準となりました。最先端ロジック半導体の製造工程では7ナノ(2018年から)、5ナノ(2020年から)へ微細化が進み、それに伴って2019年からEUV露光装置の半導体製造ラインへの導入が始まりました。更に2022年には3ナノ半導体の量産が始まると予想されます。この大きなトレンドに沿って、レーザーテックでは特にEUV用マスク欠陥検査装置などのEUV関連製品の受注が伸びています。

 この結果、今1-3Q累計受注高は648億4,400万円(前年比2.1倍)へ大きく伸びました。今3Q末受注残高は958億400万円となり、今2Q末の768億6,800万円から更に増加しました。

表3 レーザーテックの業績

株価    7,210円(2020/4/30)
発行済み株数    90,178千株
時価総額    650,183百万円(2020/4/30)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社の所有者に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

グラフ4 レーザーテックの全社受注高

単位:百万円、四半期ベース、出所:会社資料より楽天証券作成

2.2020年6月期会社予想は変更なし。楽天証券は2021年6月期、2022年6月期業績予想を上方修正する。

 会社側は2020年6月期業績予想、売上高400億円(前年比39.0%増)、営業利益140億円(同76.3%増)を維持しました。ただし、品目別売上高の今期予想は修正されており、半導体関連装置は台湾の顧客の投資が強いため、前回予想の307億円が320億円に増額されました。その他はフラットパネルディスプレイ(FPD)向けの中国向けの納入が遅れているため30億円が25億円に減額、サービスはサービス開始提供の後づれで63億円が55億円に減額となりました(表4)。

 また、2020年6月期通期受注高の会社予想は、前回予想の700億円から850億円に上方修正されました(このうち半導体関連装置は605億円→760億円)。今期末受注残高の会社予想は、前回予想の855億円から1005億円に上方修正されました(同じく818億円→960億円)(表5)。

 楽天証券では、前回2020年3月6日付け楽天証券投資WEEKLYで、レーザーテックの2020年6月期業績予想をやや下方修正しました(売上高400億円、営業利益140億円を、各々380億円、130億円に下方修正)。新型コロナウイルスの影響による製品検収(装置が顧客工場で動くか検査した後売り上げに計上する)の遅れを懸念したためです。今3Qまでは製品検収の遅れがあったようですが、通期では心配するほどではないようなので、楽天証券の今回の2020年6月期業績予想は会社予想と同じ水準に戻します。

 レーザーテックのマスク欠陥検査装置は納期がおおむね6カ月から2年かかると思われるため、今期の新規受注は主に2021年6月期、2022年6月期の業績に反映されると予想されます。増加が続く受注高、受注残高を織り込んで、2021年6月期、2022年6月期の楽天証券予想業績を上方修正します。2021年6月期は、前回の売上高550億円、営業利益210億円を、売上高560億円、営業利益220億円に、2022年6月期は前回の売上高750億円、営業利益300億円を、売上高820億円、営業利益340億円に上方修正します。好調な業績が予想されます。

表4 レーザーテックの売上高内訳:通期ベース

単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成。

表5 レーザーテックの受注高、受注残高内訳:通期ベース

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成。
注:端数処理のため合計が合わない場合がある。

3.今後6~12カ月の目標株価を1万円とする

 今後6~12カ月間の目標株価を1万円とし、前回の8,500円から引き上げます。2022年6月期楽天証券予想EPS 268.4円に想定PER35~40倍を当てはめました。今後微細化が3ナノ(2022年から)に進展することによって、EUV用マスク欠陥検査装置、EUV用マスクブランクス欠陥検査装置(マスクブランクスはフォトマスクの材料)の受注増加が中長期にわたって続くと予想しました。そのため、高成長に相応した高いPERが実現すると予想しました。

 引き続き投資妙味を感じます。