2018年以降の原油の動きをレビュー

 ご参考まで、2018年以降の原油価格の動きをレビューします。

WTI原油先物(期近)の動き:2018年12月末~2020年4月20日

【1】2018年1~10月:上昇トレンド
 世界景気が好調であったこと、OPEC諸国の減産が続いていたことから、2018年は10月まで原油価格の上昇トレンドが続きました。米国がイランへの経済制裁を再開し、2018年11月からイラン産原油の禁輸を実施すると宣告していたため、11月が近づくにつれ、イラン産原油の供給減少懸念から、投機筋の買いが続きました。トランプ米大統領が、イラン産原油の禁輸に違反する企業に重い制裁を課すことを示唆していたため、供給不足懸念が強まりました。

【2】2018年11~12月:急落
 ところが、実際に11月になると、米国はイラン産原油禁輸の「適用除外」に、日本を含む8カ国・地域を指定しました。この発表を受けて、原油は急落しました。それに加え、中国景気悪化で中国需要が減速する思惑も出て、原油の下げ材料となりました。また、米シェールオイルの増産が続き、米国の石油在庫が増加してきたことも、売り材料となりました。

【3】2019年1~12月:反発
 米中通商交渉が合意に達する期待が広がり、貿易戦争で減速している世界景気も回復に向かうとの期待が出ました。それを受け、原油も買い戻されました。

【4】2020年1~4月:急落
 コロナ・ショックで世界景気が急激に悪化、原油需要が減少する中、3月6日、OPEC・非OPEC共同の原油減産に向けた話し合いが決裂したことを受けて、原油価格は急落しました。減産に向けた協議がまとまらなかったため、減産は3月末で失効、4月1日よりサウジアラビアは2割以上の増産を行いました。そこで、原油はさらに急落しました。

 サウジはこれまで、OPEC・ロシアの協調減産で中心的役割を果たしてきました。ところが、サウジが減産している間に米シェールオイルの増産が続き、2019年には米国がサウジを抜き、世界最大の産油国となりました。これに業を煮やしたサウジは、今回は原油を急落させることで、米シェールオイル潰しを狙ったと考えられます。実際、原油急落で生産が継続できず、破綻に追い込まれるシェールオイル業者も出始めています。

 ただし、今回の暴落は、サウジの想定をはるかに上回る規模となりました。そうした中、4月に入り、トランプ米大統領の呼びかけに応じ、やっと、OPEC・非OPECで合わせて日量970万バレルの減産合意が実現しました。

 ところが、需要の方が、日量2,000万バレル以上減少していることがわかり、原油はさらに暴落し、ついに4月20日に、WTI原油先物5月限がマイナスに突入しました。

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