逆原油ショック:原油安が日本株の新たな売り材料に
日本は、原油など資源の輸入国です。中国や欧州、米国も資源の輸入国です。本来なら、資源価格の下落は、日本・中国・欧州・米国の景気・企業業績にプラスのはずです。
ところが、原油があまりに急激に下落した場合は、事情が異なります。資源の輸出国だけでなく、資源の輸入国の景気・企業業績にも、悪影響が及びます。それが、「逆原油ショック」と言われるものです。
逆原油ショックは、原油急落の直後に起こります。古くは、1987年の例があります。第二次オイルショック後の原油急落局面で起こったのが、1987年の逆原油ショックです。
近年では、2016年1~3月の逆原油ショックが記憶に新しいところです。原油価格が1バレル100ドル超から50ドル以下まで一気に急落したことから、逆原油ショックが起こりました。この時、資源国(ブラジル・ロシア)だけでなく、資源輸入国(中国・日本・米国・欧州)の景気も一時的に悪化しました。
原油が急落すると、なぜ、原油の輸入国の企業業績が悪化するのでしょうか。日本を例にとって説明します。原油急落直後の2016年前半に、日本には、以下の3つのマイナス影響が及びました。
【1】 資源権益に減損発生
海外に資源権益を有する大手総合商社・非鉄などで、巨額の減損損失が発生しました。
【2】 在庫評価損
石油精製業では70日分の原油備蓄が義務づけられています。高値の在庫を抱えたまま、石油製品の価格が急落したため、巨額の在庫評価損が発生しました。鉄鋼・非鉄・石油化学など素材産業では、資源の高値在庫が業績を悪化させる要因となりました。
【3】 中東産油国による日本株売り
原油収入の減少を補うために、中東産油国による日本株などの株式売却が増えました。
今回の原油急落でも、2016年と同様、上記【1】~【3】のマイナス影響が日本に及ぶ可能性があります。
米景気も原油急落でダメージを受けます。米国は今や世界最大の産油国です。原油急落によって、シェールオイル産業で破綻が出ていますが、今後、さらに破綻が増加する可能性があります。そうなると、シェールオイル産業が巨額の資金調達している米国の社債市場に、不安が広がります。
こうして、逆原油ショックが懸念される状況になってきていることが、今の世界の株式市場にとって、新たな不安材料となっています。