感染症専門家の厳しい見方
このように経済再開への期待が先行し、NYダウは半値を戻しましたが、現実的には経済再開は感染拡大の速さを見ながら段階的に進むと思われます。FRBの当局者は米経済再開と新型コロナウイルス感染の再流行阻止を切り離すことはできないと主張し、両立に向けた方法が必要との見解を示しています。
感染症の専門家達はもっと厳しい見方をしています。
感染症の専門家達は、新型コロナウイルスが1年後に地球上から完全になくなっているとは考えにくいとみているようです。ウイルスが地球上から完全になくなる世界ではなく、人が新型コロナウイルスと共存する世界になるとみているようです。そのためには、(1)ワクチン開発、(2)人口の相当数が感染し集団免疫を持つこと、(3)人々の行動様式や社会の在り方を変えることが条件となり、それによってはじめて人は新型コロナウイルスと共存できると考えているようです。感染症の専門家達の方がエコノミストやマーケット参加者よりも先行きのリスクに関して楽観的ではないということがよく分かります。
4月14日、WHO(世界保健機関)は「ワクチン開発が少なくとも12カ月程度で実現すると予想すべきではない」と厳しい見方を示しました。また、WHOは集団免疫についても、「感染者が回復後に再び陽性になる患者が出ていることから、回復後に免疫がつくかどうかは不明」との見解を示しています。
もし、そうだとすれば、半年や1年で新たな世界に達するとは考えにくいかもしれません。経済活動は再開されてもコロナ前の状態を下回り、これまでの生産活動や消費スタイルが元に戻るには相当時間がかかるかもしれません。
モルガン・スタンレーのアナリストは、コロナ感染の大流行が終わるのはワクチンが開発されてからで、早くても2021年の春だとし、そして、米国経済が新型コロナウイルスの感染拡大前の状態に戻るのは2021年10-12月期だと予測しています。来年の終わりには元の経済水準に回復するとの予想ですが、感染拡大のピークは過ぎても、ワクチン開発が遅れると回復はもっと遅れるということになります。
半値まで戻したNYダウですが、経済再開計画が発表された後、更に期待は高まり「半値戻しは全値戻し」の格言のように2万9,000ドルに向けて上昇を続けていくのでしょうか。米経済が落ち込むことは株式市場では織り込み済みとの見方もありますが、経済再開計画の発表によって人々が楽観的になり、気が緩むと第2波が襲ってくるリスクは残っています。感染の第2波、第3波が襲ってくれば、経済回復はつまずいてしまう可能性が高まります。