2)「コト」消費はインターネットと相性が良い

「コト」消費の中でもライブ・エンタテインメントについて見ると、リアルの世界にとどまらず、ネット配信やテレビ放送で重要なものになっています。また、ネットとリアルは相性がよく、相乗効果が期待できます。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐために、2月26日(水)から3月19日(木)まで日本列島は総自粛となりました。劇場とライブハウスは営業を止め、音楽ライブ、演劇、ミュージカル、数々のイベントが中止、または延期となりました。

 そのような中で、いくつかのアーティスト、ミュージシャンが、ライブ、舞台の無料ネット配信を行いました。音楽会社でもエイベックスがYouTube公式チャンネル「エイベックス・チャンネル」で、所属アーティストのライブ映像コンテンツを無料公開しました(3月5~31日)。これらはいずれも好評でした。

 その中の一つ、「乃木坂46 幻の2期生ライブ」が3月7日(土)18時からSHOWROOM(アイドル、声優などの生配信サイト)において生配信されました(「乃木坂46」は秋元康氏とソニー・ミュージックの共同事業です)。「乃木坂46 2期生ライブ」は、もともと3月7日に代々木第一体育館において約1万人規模で開催される予定だったのですが、新型コロナウイルス感染拡大の中で中止となりました。その代わりに、SHOWROOMで特別番組を無料配信することになったのです。

 当日は、乃木坂46 2期生メンバーの歌とトークショーが約2時間20分にわたって披露されましたが、集まった視聴者(入室者)は約42万人でした。SHOWROOMは1人30分からグループ2時間の番組でトークを行うのですが、普通のアイドル、声優で視聴者(入室者)は数千人から1万人前後、乃木坂46のメンバーで2万~3万人から5万人以上です。2018年12月に卒業した西野七瀬さん(白石麻衣さんと並ぶトップ人気だった)の最後の単独SHOWROOM(2018年10月)は10万人超えでした。42万人は飛び抜けた数字なのです。

 これだけの人数を集めるとマネタイズ(収益化)が十分可能になることも実証されました。配信開始前にメンバーが紹介する2期生グッズ(Tシャツ、タオルなど)をネット通販で販売しましたが、10分で完売しました。2期生ライブが再度開催される場合には、私見ですが10万~20万人規模のファンがチケットの抽選に応募すると思われます。

3)ライブ・エンタテインメントはハイテクとも相性が良い

 ライブ・エンタテインメントはハイテクとも相性が良いと思われます。5Gが普及すると、5Gを使って4K、8K動画を大画面で楽しむことができるようになります。そしてそれが今よりも一層、音楽ライブ、演劇、ミュージカルなどのリアルエンタテインメントへの関心を喚起すると思われます。

 また、ステージ演出が年々大型化し凝ったものになっています。大型LEDパネルによる演出やレーザー光線を使ったテクスチャ・マッピングなどが盛んになっています。

 コト消費関連は雇用面でも重要です。アーティストを支援する仕事が多く、大型ライブの開催や劇場公演には多くの多種多様な人材が必要になります。

 このようにライブ・エンタテインメントなどの「コト」消費関連産業は、日本の基幹産業になりうる産業であると思われます。

 2月26日からの自粛期間が3月20日に明けた後すぐに、東京都と神奈川県で、3月28日(土)、29日(日)が再び自粛となってしまいました。2月25日まではライブ・エンタテインメントはどの分野も活況でしたが、3月20日に再開された劇場では観客はある程度戻っているものの、空席も目立ったもようです。特に高齢者の観客が観劇をあきらめるケースがあるようです。

 また音楽ライブは、中小規模から大規模ライブまで再開に時間がかかりそうです。

 一刻も早く劇場とライブハウスの賑わいが元に戻り、更に発展することを願ってやみません。

エンタテインメントの重要分野

ゲーム(家庭用ゲーム、スマホゲーム、パソコンオンラインゲーム)
音楽・動画配信
自己表現(YouTube、各種のSNS)
ライブビューイング
音楽ライブ、演劇、映画

5.関連銘柄

1)パソコン関連

 パソコン関連の注目銘柄としては、日本企業の場合、半導体製造装置メーカー(東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテック、SCREENホールディングス、ディスコ)を挙げたいと思います。パソコン用CPU最大手のインテルが最先端CPUの増産のための設備投資を継続しています。2番手のAMDはTSMCに最先端の7ナノCPUを生産委託していますが、TSMCにとっては5Gスマホ用チップセットに続き、パソコン用CPUが新たな有望分野となっています。

表3 大手半導体メーカーの設備投資

出所:各社会社資料、報道より楽天証券作成
注1:2020年12月期はTSMC、インテルは会社計画、サムスンは楽天証券予想。
注2:1ウォン=0.9円、1ウォン=0.0008ドル。

2)5G関連

 5G関連銘柄は表4の通りです。まず、半導体製造装置メーカー、電子部品メーカー(村田製作所、TDK、太陽誘電)に注目したいと思います。新型コロナウイルスという阻害要因はありますが、5Gは投資する価値の大きい分野です。5G用計測器のアンリツにも注目したいと思います。

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクがいよいよ5Gサービスをスタートさせるため(NTTドコモは3月25日から、KDDIは3月26日から、ソフトバンクは3月27日から)、これらの通信会社、特にNTTドコモに注目したいと思います。

 5Gのサービスエリア拡大のために、基地局建設も急ピッチで進むと思われます。富士通、日本電気に注目したいと思います。また、5Gネットワークと並行して日本の光ファイバーネットワークを強化する必要があります。ネットワークインテグレーターの伊藤忠テクノサイエンスにも注目したいと思います。

表4 5G関連銘柄

出所:楽天証券作成

3)「コト」消費関連銘柄

「コト」消費に関連する主な銘柄を下に示します。

東宝:劇団四季、宝塚歌劇団と並んで日本を代表する演劇事業が東宝演劇。演劇部門は営業利益率20%以上。

阪急阪神ホールディングス:子会社阪急電鉄が宝塚歌劇団を運営。

松竹:演劇部門を持つ。

東映、アミューズ、エイベックス:いずれも、演劇、ミュージカルの新規参入組。アミューズ、エイベックスは、年間で数多くの音楽ライブに関わっている。

ヒビノ:放送局、劇場向けの映像、音響、通信設備の販売と、ライブ、舞台関連の演出関連機材の貸し出し、運営を行っている。

ソニー:世界展開する映画、音楽、ゲームの3大エンタテインメントを世界で唯一持ち、一方でテレビ、カメラ、スマートフォン、半導体のハードウェア事業を持っている。世界的に見てもユニークなビジネスモデルである。「コト」消費と「モノ」消費を巧みに結びつけている会社でもある。例えば、音楽ライブに行く人が家でライブのBDや配信を大型4Kテレビで見ると、再びライブに行きたくなると思われる。また、ライブに行ったことがない人が大型4Kテレビでそれを見ると、ライブに行きたくなるかもしれない。

任天堂、カプコン、バンダイナムコホールディングスなど:自粛時代の引きこもり消費としてはゲームが代表例。任天堂は、「あつまれ どうぶつの森」(3月20日発売)の評判が良好。カプコンは、「モンスターハンターワールド」が累計販売本数1,500万本以上となっており、優良ソフトの開発能力が高い。バンダイナムコホールディングスは、家庭用ゲームソフト、スマホゲーム、玩具、音楽ライブ、アニメ制作と、遊びの間口が広い会社である。

 当面は、自粛要請が続いていることを考慮するとともに、コンテンツの優良さを評価して、東宝、ソニーに注目したいと思います。

 また、ゲーム関連のカプコン、バンダイナムコホールディングスは、一定の株価上昇が期待できると思われます。

本レポートに掲載した銘柄:東宝(9602)阪急阪神ホールディングス(9042)ソニー(6758)ヒビノ(2469)NTTドコモ(9437)日本電気(6701)村田製作所(6981)TDK(6762)東京エレクトロン(8035)アドバンテスト(6857)レーザーテック(6920)