(4)個々の資産分類(アセット・クラス)ごとの商品選択

 個々のアセット・クラス、たとえば「国内株式」に対応するファンドを選ぶポイントは、(A)中身が明快で投資に無駄がないか(常に100%近く一つの資産クラスないしその一部に投資しているファンドがいい)、(B)手数料コストは小さいか、(C)残高がごく少なく償還されそうだといったネガティブな特殊事情はないか、という3点だ。随分単純だと思われるかもしれないが、むしろ、これらの3点以外の余計なことに気を取られると運用効率を下げかねないので、注意してほしい。

 たとえば、過去の運用成績は基本的に将来の運用成績とは無関係なので、運用方針と運用プロセスの一致を確認するといった目的以上に使えるものではない。また、後述のように「将来の運用成績が」相対的にいいアクティブ・ファンドを事前に選ぶスキルがないことは、一般投資家も、投資信託の販売会社、あるいは投資信託の評価機関といったプロについても同様なので、将来のより良いパフォーマンスを求めて外部の情報を頼ることも、基本的には無駄である。

 加えて、一点注意しておくと、債券と株式など複数の資産クラスに投資する「バランス・ファンド」(近年「資産分散型」という呼び方もある)は、いつ何に投資しているかの把握が難しく、また、個々の資産クラスに別々に投資するよりも手数料が割高になりがちなので、個人投資家の投資に適した商品になる可能性は小さい。

 バランス・ファンドでは「プロが資産配分(アセット・アロケーション)を行います」と謳(うた)うことが多いが、残念ながら、資産配分においてプロが有効なスキルを持っているか否かという点に関しては、否定的な研究結果や意見が多い。プロのアセット・アロケーション・スキルについては過大な期待を持たない方がいい。

 投資信託の売り手側は強調しないことが多いが、手数料の影響は大きい。特に、信託報酬は、運用期間の全てにわたってパフォーマンスにマイナスの影響を与えるので、多くの場合最重要の比較項目だ。

 動かし難い傾向性として、一つには「アクティブ・ファンドの平均はベンチマークに負けていることが多く」、もう一つには「相対的にパフォーマンスの良いアクティブ・ファンドを事前に選ぶことはできない」。この両者と、インデックス・ファンドの方が手数料(特に信託報酬)が低いことを考えると、個々のアセット・クラスそのもの、ないしは重要な部品(外国株式における個別国の株価指数に連動するインデックス・ファンドのようなもの)となるようなインデックス・ファンドが有力な候補となる場合が多いだろう。

 現時点では、内外の株式共に、ETF(上場投資信託)の信託報酬の安さが圧倒的なメリットである場合が多いが、投資単位(ETFはある程度まとまった金額で売り買いされる)や売買の手数料なども総合的に勘案して、最も有利なファンドを選択したい。