運用の手順

 投資信託を使うからといって、運用の基本的な手順は変わらない。作業を順番に挙げると、以下の通りだ。

(1)家計の分析

(2)リスク資産への投資額の決定

(3)リスク資産への投資配分の決定

(4)個々の資産分類(アセット・クラス)ごとの商品選択

(5)商品の購入場所の選択

(6)運用のモニタリングと(必要があれば)修正

 個々の作業について補足する前に、よくある誤りについて説明すると、(3)→(4)→(5)であるべき手順が逆になることが多い。つまり、最初にどこの金融機関で投資信託を買うかを決めていて、その金融機関の扱い商品の中からセールスマンの勧めなどを聞いて投資対象を選び、結果的に資産配分が決まった、というような運用の手順だ。

 現在、投資信託は、全く同じ商品(同じ運用会社で、同じ名前の、完全に同じファンド)でも、どこの窓口で購入するかで実質的な手数料が違うことがある。たとえば、同じファンドを1,000万円買う場合でも、A社で買うと30万円(=3%)の手数料がかかるが、B社で買うと15万円(=1.5%)で済むといったことが頻繁に起こっている。加えて、たとえば「国内株式に投資するファンド」という具合に投資対象を決めても、1社の取り扱い商品の中に、そのカテゴリーでベストのファンドがあるとは限らない。資産クラスごとに投資額を決めて、広い範囲からファンドを選び、最も有利な窓口でそのファンドを購入することが大切だ。

(1)家計の分析

 家計の分析は、いかなる投資を行う場合でも重要だ。主な目的は、リスクを取った投資を行うことが適切かどうか判断し、いくらまでならリスクを取ることができるかを決めるための情報収集だ。詳しい方法については、たとえば、「山崎元のホンネの投資教室」第7回「投資家のための家計分析の簡便法」などをご参照されたい。個々の家計の経済的な事情は、所得や貯蓄額が同じでも大きく異なる場合があり、一つ一つ異なる。この点については、最も豊富に情報を持っているのは自分自身なので、ご自分で慎重に考えてほしい。ファイナンシャル・プランナーなどのアドバイザーを利用してもいいが、商品の購入先になる可能性のある相手は、アドバイスの内容が客観的でなくなる可能性が大きいので、なるべく避けるべきだ。