(2)リスク資産への投資額の決定

 次にリスク資産への投資額を決定することになるが、より正確に言うと、取ることができるリスクの大きさ(の上限)を決めることになる。たとえば、同じく1年後に100万円まで損失を出しても大丈夫な場合でも、個別の株式1銘柄だけに投資する場合(せいぜい150万円くらいが上限だろう)と、投資信託のように実質的に分散投資された商品に投資する場合とでは、投資できる額が異なる。後者の場合、1年間の損失額は最大で投資金額の3~4割程度なので、同じ許容リスクに対して、250万円から300万円投資することができる。

 よく、「なくなってもいいお金で投資しなさい」と言う人がいるが、たいていの場合は、文字通りなくなってもいい(大丈夫な)お金以上の金額に投資することが可能だ。もちろん、投資可能な金額の上限いっぱいまで必ず投資しなければならないというものではないが、取ってもいいリスクの上限を小さく見積もりすぎると、運用の効率が悪くなる。

(3)リスク資産への投資配分の決定

 資産配分はプロのファンドマネージャーや年金基金でも悩む資産運用の難所の一つだが、あまり投資金額が大きくない個人投資家の場合(せいぜい数億円までの場合、ほぼ間違いなく)、リスク資産部分の投資は、国内株式と外国株式を中心に考えていいだろう。

 外国債券は、有効な分散投資が難しいことと、基本的に業者間の店頭取引であるため取引価格の妥当性に自信を持てない場合が多いことから、個別の債券で適切に投資することが難しいし、外国債券に投資する投資信託の場合、期待リターンに対して手数料が高いファンドが多いため、経済合理的には個人の資産運用の対象になりにくい。特に為替リスクを取る場合は、外国株式でも為替リスクを取ると、トータルで過大な為替リスクを持つことになりかねないので、外国株式への投資を優先する方がいいだろう(為替ヘッジを効果的に行う場合この限りではないが、個人投資家には難しい場合が多いだろう)。

 ただし、外国株式については、1カ国の株式市場だけに大きな金額を投じると、リスクが大きくなりすぎる場合が多い。一般的には、特定の国の株式の有望性によほどの確信があるのでなければ、外国株式への投資にあっては、数カ国以上の株式に投資するか、iShares MSCI-KOKUSAI(22カ国の株式が含まれる)など、複数の国の株式への投資をベンチマークとするファンドに投資すると良い(リスク資産の投資配分の決め方については、本連載の「ETFを使った個人資産運用~簡便法~」などをご参照されたい。今後もこの分野については情報を提供していく予定だ)。