下落リスクを小さくしつつリターンを確保する

 2019年12月26日の記事にあるとおり、2019年12月は、日経平均株価は「割高」と判断していました。このため、日経平均株価が上がればプラスになる買いポジションではなく、下がればプラスになる売りポジションを持っていたので、コロナショックで日経平均株価が急落する中、資産を守り、増やすことができたのです。

>>この手法を使った、筆者の助言に基づくモデル・ポートフォリオのパフォーマンスを、こちらでご覧いただけます。

 私は運用する際に、「資産額全体をいかに大きく減らさないようにするか」を一番に考えています。

 運用において、一般的には「分散投資×長期保有」が良いとされていますが、コロナショックのようなことが起こると、どうしても資産は減ってしまいます。一方で、「分散投資×長期保有」において、資産を大きく減らさないようにするには、リスクを低減する形(国内債券や外国債券(為替ヘッジあり)が多いポートフォリオ)となり、リターンも小さくなってしまいます。

 下落リスクを小さくする一方で、リターンを伴う形にしたいとするならば、やり方が違ってきます。上がればプラスになる買いポジションのみでは、今回のコロナショックのような局面で、資産は減ってしまいます。資産を減らさないようにするためには、買いポジションのみではなく、現金ポジションを活用するか、できれば、下がればプラスになる売りポジションまで踏み込んでいくという手法になります。

 長期保有で下がってもじっと耐えるのではなく、上がった時には現金化して避難し、下がるまでじっくり待つという、投資比率を変えていく手法になります。

 資産運用する上では、当然のことながら、資産は増えたり減ったりしますが、皆さまもできれば大きく減ってしまうことは避けたいでしょう。今回のコロナショックのような局面で資産を大きく減らしてしまうことは、セカンドライフを控えた50代の方、60代の方、特に年金生活の方(築き上げてきた大切な資産を運用で増やしながら、生活の足しにしていきたいという方)にとっては、とてもきつい状況では、と私は思います。

 今回、ご紹介した運用方法においても、割安・割高をどのように判断するか、投資比率をどのような基準で変えていくのかは簡単ではありませんし、実際にやってみると、心理的な負担がかかる局面(特に、日経平均株価が下がればプラスになるETFを保有して、日経平均株価が上がっていってしまう局面)もあります。

 私自身、これまでに多くの方とやり取りをしてきましたが、多くの方に共通する根底の想いは「(リターンはしっかり確保して)増やしたいけど、(下落リスクは小さくして)減らしたくない」だと思います。その「増やしたいけど、減らしたくない」を実現するために、どのような運用方法が自分に合っているのか、改めてこの機会に考えてみてはいかがでしょうか?