新型コロナウイルス封じ込めが先決

 先行きの不安解消のためには、新型コロナウイルス対策にお金を使うというのが現時点では最も効果的な政策と考えられます。先週13日(金)のNYダウ平均株価の大幅反発も、トランプ大統領の新型コロナウイルス封じ込めに500億ドルの資金を使うという政策が効いたようです。

 1週間以内に140万個の検査キットを用意し、ドライブスルー方式で簡便にウイルス検査が受けられるようにするとのことです。しかも、検査は無料の予定です。短期的には感染者が急増する可能性がありますが、トランプ大統領は「短期的な犠牲は長期的な利益につながる」と国民に理解を求めました。利下げでは先行きの不安感を払拭することができませんでしたが、感染者急増を受け入れてでも封じ込めるという姿勢がマーケットでは評価されたようです。

 現在の相場を鎮めるためには、新型コロナウイルスの感染拡大が終息することが確認されるか、ワクチンの開発や治療法が確立されることが重要です。16日にはG7(主要7カ国)首脳が緊急のテレビ会議を開き、「治療法とワクチンの迅速な開発、製造、流通」に向けた協力が確認されました。しかし、ワクチンの開発に通常は数年かかるといわれています。

 現在、新型コロナウイルス感染拡大の勢いは中国から欧州へ、米国にも移っていきそうな気配です。それを感じてか、トランプ大統領は珍しく弱気な発言をしました。16日午後、トランプ大統領は記者会見で感染拡大の終息時期について「7月か8月との見方もある。さらに延びる可能性もある」との見通しを示し、また、記者団から景気後退の可能性を問われると「かもしれない」と答えました。これまでは「暖かくなる4月にはウイルスは消える」などと楽観的な見方を繰り返していましたが、現実を直視したようです。この発言を受けてNYダウは過去最大の2,997ドル安となりました。

 トランプ大統領の封じ込め対策はマーケットに評価されましたが、課題も多いようです。例えば、不法移民は本国送還を恐れて検査を受けないだろうとか、検査は無料でも、もし、入院となった場合は入院費が払えないため、検査を受けない人も多いのではないかとさまざまな課題が指摘されています。そして最大の課題が感染者急増の場合の米国の医療崩壊の可能性です。こうなると米国もイタリアのような事態に陥るかもしれません。