4.3ナノまでは現行世代のEUVで、2ナノからは次世代EUVで

 グラフ2、3はASMLのEUV露光装置の四半期ベース受注台数、販売台数を表したものです。2019年12月期に受注が大きく伸びたことがわかります。販売台数も伸びており、年度ベースでは、2018年12月期18台、2019年12月期26台、2020年12月期会社見通しでは35台となっています。

 ASMLが現在受注、出荷している第1世代のEUV露光装置は、改良を加えながら3ナノまで使えると思われます(3ナノの量産は2022年にスタートか)。その後の2ナノ、1.5ナノ、1ナノでは、従来のような2年ごとの微細化の進歩が3年ごとになる可能性があります。

 もし2ナノが実現する場合は、量産開始は2024~2025年と予想されます。ASMLではこの2ナノ以降の最先端半導体の量産に向けて次世代EUV露光装置を開発中です。

 実際に、どの時点で次世代EUV露光装置が製造ラインに導入されるかまだ分かりません。現行世代のEUV露光装置の台数を増やして微細化の進展に対応する考え方もあるからです。

 これは、微細化の進展によって予想される利益と設備投資の見合いの問題です。EUV露光装置は、最先端半導体を効率的に量産するのに欠かすことのできない装置ですが、価格が高いのが難点です。ASMLの決算資料から試算すると、1ユーロ=117円換算で、KrF露光装置の1台約13億円、ArF液浸露光装置の同約68億円に対して現行世代のEUV露光装置は同約125億円です。もともと露光装置は半導体製造装置の中でも高価ですが、EUV露光装置は更に高価なのです。

 そして、次世代EUV露光装置は、現在のところ更に高額で1台260~300億円すると言われています。これが実際に導入されるのかどうかは、今後の5ナノ、3ナノ半導体の半導体メーカーにとっての儲かり具合、ひいては、5ナノ、3ナノ半導体を搭載したスマートフォン、パソコンなどの売れ行き次第と言えます。

 ただし、5G時代を迎えて、スマートフォンやパソコン、サーバーなどのコンピューティング分野は、市場拡大が有望な市場です。2ナノ、1.5ナノの世界も実現する可能性があり、その場合は次世代EUV露光装置の需要も出てくると思われます。

グラフ2 ASMLのEUV露光装置:受注台数と販売台数

単位:台、四半期ベース、出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ3 ASMLのEUV露光装置:受注台数と販売台数

位:台、年度ベース、出所:会社資料より楽天証券作成

表3 ASML:業績推移

単位:100万ユーロ、%
出所:会社資料より楽天証券作成

表4 ASML:EUV露光装置の売上高、販売台数、単価

出所:会社資料より楽天証券作成

5.EUV関連銘柄

 表5は日本におけるEUV露光装置関連銘柄の一覧です。主な企業のみ列挙しました。

 この中で重要なのは、まずレーザーテックです。EUV用マスクブランクス欠陥検査装置(EUV光源を使うタイプ)では世界シェア100%です。EUV用マスク欠陥検査装置のうち、光源にEUV光を使いペリクル(フォトマスクの防塵カバー)付きフォトマスクの検査が可能な機種でも世界シェア100%、ディープUV光を光源に使ったペリクルなしのEUV用フォトマスク欠陥検査装置では過半数のシェアを持っています。業績は好調です。

 次に東京エレクトロンです。EUV露光装置が最先端半導体製造ラインに導入されることになって、より複雑なロジック半導体や大容量高速DRAMが生産されるようになると、東京エレクトロンにとっても成膜装置、エッチング装置、コータ/デベロッパなどの前工程装置の市場拡大につながります。

 3番目はアドバンテストです。EUV露光装置によってより一層回路が複雑な半導体ができて量産されると、テスタ需要はより大きくなると予想されます。間接的な効果ですが、この効果が続く限り少なくとも非メモリテスタの需要は持続的に増加すると思われます(間接的な効果なので表5にアドバンテストは載せていません。ただし、EUV時代の半導体設備投資における重要企業です)。

 レーザーテック、東京エレクトロン、アドバンテストの業績予想は、表6~8の如くです。目標株価は、レーザーテック8,500円、東京エレクトロン3万4,000円、アドバンテスト9,000円でいずれも前回から変更しません。

 足元の新型コロナウイルス問題が長引けば、5Gスマホの需要拡大が先延ばしになり、最先端半導体の需要と量産のための設備投資も先送りされるリスクがあります。ただし、先送りされても半年程度と思われます。当面はEUV関連中心に半導体関連株の買い場を探したいと思います。

表5 EUV関連銘柄

出所:楽天証券作成

表6 レーザーテックの業績

株価    4,460円(2020/3/12) 
発行済み株数    90,178千株 
時価総額    402,194百万円(2020/3/12) 
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社の所有者に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

表7 東京エレクトロンの業績

株価    20,125円(2020/3/12) 
発行済み株数    155,500千株
時価総額    3,129,438百万円(2020/3/12) 
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

表8 アドバンテストの業績

株価    4,285円(2020/3/12) 
発行済み株数    198,372千株
時価総額    850,024百万円(2020/3/12)
単位:百万円、円 
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。

本レポートに掲載した銘柄:レーザーテック(6920)東京エレクトロン(8035)アドバンテスト(6857)