何が起きてもおかしくないという気持ちでいる

 平時のマーケットは、「何か想定外のとんでもないことはまず起きない」という前提で動いています。だから株価の変動もそれほど大きくなりませんし、株価が急落することもありません。

 ところが、そのような平時の状態が永遠に続くことはありません。やはり誰もが想定していなかった出来事というのは、ある日突然やってくるのです。

 今回の株価下落は、新型コロナウイルスの影響はある程度は織り込んだでしょうか。

 例えば、世界中でパンデミックが起こり、全ての国と日本が行き来できなくなったり、学校休校のみならず自宅から一歩も出ることを許されなくなる、完全に経済が止まってしまう…、ここまではまだ織り込んでいないのではないでしょうか。

 また、今年開催の東京五輪がもし中止にでもなったら、それこそ株価にどのような影響があるか、全く見当がつきません。

 先日レバノンでデフォルト(債務不履行)が発生しましたが、これを皮切りに世界各国でデフォルトが多発し、金融危機が勃発したら株価はどうなるでしょうか? さらなる急落は避けられそうにありません。

 このように、世の中では常に想定外のことが起こるリスクがあり、それにより株価も大きく下落してしまうのです。

 株価がいつまでも右肩上がりで上昇を続けるというのは幻想に過ぎません。たまたま2012年末から7年間、長期上昇相場が続いただけなのです。これが今後も続くという保証はどこにもありません。

 したがって、今後も何が起こってもおかしくない、という気持ちをもってマーケットと向き合うべきです。最もするべきではないのは、将来を予想して、「こうなるはずだ」と半ば決めつけてしまうことです。

 今年に入ってからここまでの株価下落を正確に予想できた人は皆無だと思います。予想をするのではなく、どこまで下がってもおかしくないという気持ちでいることと、それに備えた売買のルール作りが大事です。

大失敗したくなければ守ってほしい2つの事柄

 筆者は、個人投資家の多くが株価の大きな下落により多額の損失を被り、大失敗してしまう理由が2つあると常々思っています。1つは逆張りをしてしまうこと、もう1つは適時の損切りをしていないことです。逆に言えば、逆張りを避けて順張りに徹し、かつ適時に損切りをすれば、大失敗は防げるのです。

 実際、筆者は常に順張りを行い、25日移動平均線を上回っている銘柄しか保有しません。もし買った株が25日移動平均線を割り込めば、即座に売却ないし損切りを実行します。

 これを今回の下落相場でも愚直に続けたことにより、株価下落によるダメージをわずかにとどめました。

 でも、逆張りをする個人投資家は、1月はじめのちょっとした急落でも逆張りをしますし、1月下旬の下落でも逆張りをします。もちろん、2月下旬の急落でも逆張りしたでしょう。

 その結果、買った株が次々含み損を抱え、どうすることもできなくなっているのです。

 もし資金力がある投資家なら、ここからさらに株価下落となっても、逆張りで買い下がりを続けていけば何とかなります。でも、資金力に乏しい個人投資家は、株価が下がるたびに逆張りの買いをしていくと、やがて投資資金がなくなり弾切れになってしまうのです。

 こうなると、塩漬けの株を抱えて株価回復をただ待つだけという悲しい結末を迎えてしまいます。

 逆張りしても、損失が小さいうちに損切りができればまだ何とかなります。しかし、逆張りをしている投資家は、安くなったと思って逆張りで買っているわけです。その株がさらに値下がりすれば、損切りするのではなく、逆に買い増すことが多いのではないでしょうか。

 逆張りをしている限りは適時の損切りもできないはずです。もし逆張りをし、かつ損切りできずにいた結果、多額の損失を被ってしまった方は、順張りに切り替え、かつ損切りを適時に行ってください。きっと、驚くほど投資成果が向上すると思います。

 今回の株価下落で多額の損失を被ってしまった方、過ぎたことは仕方ありません。でも、もう二度とこんな損失を被りたくなければ、「逆張りではなく順張り」「損切りをしっかり行う」、この2つの事柄を守ってみてください。