削減量維持よりも、“ヤミ増産ストッパー”が付いたことが重要
筆者は、削減量の件以外に、今回の会合の合意事項の注目すべき点は、以下の2-ⅱの“埋め合わせの概念”が導入されたことだと考えています。
図:2020年6月6日(土)に行われた第11回OPEC・非OPEC閣僚会議での合意事項
上記の2-ⅱのとおり、5月と6月に減産を順守できなかった国は、7、8、9月の3カ月間、順守できなかった量を、上乗せして、減産を実施することとなりました。
5月と6月に、削減をしたものの、予定した削減量に達しなかった、あるいは、逆に増産をした場合、その国自らが、9月までに埋め合わせをしなくてはなりません。今回の会合で、かつて一部で横行した“ヤミ増産”をストップする施策が盛り込まれたわけです。
冒頭で述べたとおり、減産実施は原油相場の上昇に拍車をかける要因になり得ます。産油国は、減産を実施しながら(石油収入の一部を放棄しながら)、原油相場の上昇という単価の上昇の恩恵を享受するわけです。
これまでは、苦労をしながら減産を順守する国がある一方で、ヤミ増産を行う国も存在しました。ヤミ増産を行う国は、同じ組織の一員でありながら、順守する国の苦労によって実った原油価格の上昇という果実を、ただでついばむ“フリーライダー(ただ乗りをする国)”です。
6月6日の合意内容は、「ヤミ増産をさせない」、「フリーライダーをゆるさない」ことを意図しているとみられ、各国が減産を順守することを強く重んじる合意内容と言えます。
各国が、減産順守を確実に行うことが前提であるため、ゆとりがある国がそうでない国に代わって減産を行う「肩代わり」も認められないと考えられます。