新型コロナショックが去った後、急速な需要回復・株価回復が見込まれる

「明けない夜はない」。新型コロナが世界経済に大きなダメ-ジを与えていますが、 1つだけ確かなことがあります。人類は、いずれ新型コロナを克服する手段を見つけるということです。

 今、分からないことが多すぎるために、恐怖が増幅していますが、時間が経過するにつれて、治療に効果のある抗ウイルス薬・ワクチン・簡単な検査方法が見つかってくると思います。そうなれば、凍結されている経済活動は徐々に正常に戻り、世界の株価は急速に反発するでしょう。

 ただし、それがいつか分かりません。まだかなり先かもしれません。ここは短期的な下値リスクを意識しつつ、時間分散しながら、日本株を買い増ししていくべき局面と判断しています。

 それでは、日経平均はいくらまで下がる可能性があるでしょうか? 過去の日経平均急落局面を参考にしながら考えようと思います。まず、アベノミクスが始まった以降の、日経平均急落局面を簡単に振り返ります。

2013~2016年の日経平均急落局面の分析

 まず、アベノミクスが始まってから最初の4年を振り返ります。以下の日経平均チャートをご覧ください。

日経平均の動き:2013年初~2016年末

出所:楽天証券経済研究所

 急落局面が4回あります。

【1】2013年5月:バーナンキ・ショック(日経平均下落率▲18%)

(注)日経平均下落率:日次終値ベース。直前高値から安値までの下落率。

 当時、米国FRB(連邦準備制度理事会)議長だったバーナンキ氏が「将来、金融緩和の縮小を行う必要がある」と発言すると、金融緩和に支えられて上昇していた世界の株式は一斉に急落しました。日経平均も外国人の売りで急落しました。

 当時、日本は景気回復初期にあり、世界景気も好調でした。ところが、バーナンキ元FRB議長の発言が伝わると、売りが売りを呼ぶ連鎖が起こり、世界の株式は暴落しました。バーナンキ発言以外にとりたてて悪材料のない中での暴落だったので、バーナンキ・ショックと呼ばれました。

【2】2014年1月:米金利上昇を嫌気(日経平均下落率▲15%)

  2013年12月、米長期金利が一時3%まで上昇すると、金利上昇への懸念で14年1月から世界株安が起こりました。バーナンキ氏に代わってFRB議長に就任したイエレン氏が「金融緩和の縮小」を開始したことも嫌気されました。当時、米景気が一時的に減速したことも、不安材料となりました。

【3】2014年10月:エボラ出血熱ショック(日経平均下落率▲11%)

 エボラ出血熱(エボラウイルス病)が世界に拡大する不安、世界景気が悪化する不安などから、世界的に株が急落し、日本株にも外国人投資家の売りが増えました。

 エボラウイルスはきわめて毒性が強く、感染者の致死率は40~50%に達しました。2014年6月より西アフリカで大流行し、欧州・米国でも感染者が出ました。エボラ出血熱への恐怖から、欧米で一時外出を控える動きが広がり、それが世界的な景気悪化につながるとの懸念が出ました。

 日本では感染者は見つかりませんでしたが、日本でもエボラ出血熱への恐怖が広がっていました。「もし日本で感染者が出れば、日本の消費がさらに落ち込み、日経平均は1,000円以上下がる」という人もいました。

 アフリカで多数の死者が出たエボラ出血熱ですが、欧米への感染はあまり広がりませんでした。その後、感染防止策の徹底や、治療薬の開発が進み、感染は徐々に終息に向かいました。

【4】2015年7月~2016年6月:チャイナ・ショック等から世界景気停滞(日経平均下落率▲28%)

 2015年末~16年初にかけて、世界的に景気減速が鮮明となりました。中国景気悪化が顕著で「チャイナ・ショック」と言われました。原油など資源価格急落の影響で、ブラジル、ロシアなど資源国の景気が悪化したことから「資源安ショック」とも言われました。さらに、米シェールオイル業界の不振から米国景気も減速しました。世界的な景気停滞を受けて、日本の景気・企業業績も一時的に悪化し、日経平均は急落しました。

 さらに、2016年6月に、英国の国民投票で「ブレグジット(EU[欧州連合]からの離脱)」支持が過半数を超えたことも、世界株安につながりました。当時、英国がEU離脱を決めると世界不況が起こるという評論家も多かったからです。2016年6月の世界株安は「ブレグジット・ショック」と呼ばれました。