環境を意識した経営は儲かるの?
これまでのように成長や収益一辺倒ではなく、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)を意識した経営に取り組む企業が増えています。
SDGsは17の目標と169のターゲット(具体的目標)、232の指標で構成されています。貧困や飢餓への対処、働きがいや経済成長、気候変動に至るまで網羅する内容です。
【SDGsの17の目標】
また、ESGはSRI(社会的責任投資)が発展した位置づけで、環境や社会を意識した経営戦略が企業の利益や企業価値の向上に繋がるという考えが背景にあります。行政もこうした考えを後押ししていて、2014年2月に金融庁が公表した「日本版スチュワードシップ・コード」、2015年6月に金融庁と東京証券取引所が公表した「コーポレートガバナンス・コード」は、ESGの概念を推進しています。
では、SDGsやESGへの取り組みがどれだけ企業収益を向上させるのでしょうか。この類の問題は昔から議論されていて、メセナ(芸術文化支援)に積極的な企業ほど利益率が高い、あるいは、IR(インベスター・リレーションズ)を重視している企業ほど株価が上昇するなど様々なことが言われてきました。
因果関係を考えると、高収益で経営に余裕があるからメセナなどに取り組めるという言い方もできますし、むしろ、経営者の自己満足や虚栄心のために経営資源を浪費すれば、経営が傾くという可能性もあります。企業の好不調には波がありますし、ある企業がメディアにもてはやされると、その頃がピークということもあります。
「私の履歴書の呪い」という説があり、日経新聞の私の履歴書に経営者が登場するとROE(自己資本利益率)が下がるという話もあります(他にも不祥事が発覚するなどの変形版があるようです)。
SDGsやESGは経営者や企業の一部門というよりも、広く全社員が取り組む目標・課題なので、メセナやIRとは意味合いが違う部分が大きいと思います。気候変動や環境問題を無視した経営をするのは企業の評判に関わりますし、ハラスメント、企業不祥事などへの目線は厳しくなっています。SDGsやESGは収益に繋がるというよりも、ダウンサイドリスクを減らす意味合いが強いと考えた方が無難でしょう。
そういう視点で企業のSDGsやESGへの取り組みを見ると、新たな発見があるかもしれません。