米中貿易問題はリスク?それとも成長阻害要因?

 それでは米中貿易問題は、「リスク」なのか成長率を上下させる問題なのか、どちらでしょうか? もちろん長期にわたって米中が完全に貿易を止めるようなことになれば、非効率性という点で、少しは成長率に影響があるかもしれません。しかし米国は貿易赤字国で、中国との貿易によって経済成長率が毎年2.2%分足を引っ張られているわけですから、プラスの面も小さくありません。

 この結果、恐らく、米中貿易問題が米国の経済成長率に与える悪影響など、そもそもたかが知れているか、ほぼゼロに近いでしょう。要するに、米中貿易問題は米国の成長率に与える問題ではなくて、「リスク」に影響を与える問題なのです。良い時も悪い時もあって上下変動に影響を与える、そういう問題です。

 私は米中貿易問題が騒がれ始めた頃から繰り返しこのように申し上げていますが、この区別ができていないと、今のように米国の株価が史上最高値に向かう過程は理解できなかったでしょう。

 その上で、私が2020年に向けて「リスク」と考える要因を以下の通り、3つ挙げておきたいと思います。

 第一に、やはり米中貿易問題です。この原稿執筆中に米中貿易交渉が第一弾の合意に至ったとの報道がありました。もちろん12月15日に発動予定だった追加関税が回避されたのは市場に安心感を与えたかもしれません。

 しかし、この先を考えた場合、歴史も文化も全く異なる両国が第二弾、第三弾と次々に合意していく可能性を期待するのは、かなり無理があると思います。そもそも第二弾、第三弾が合意できないから今回第一弾のみの合意にとどまったのであり、この第一弾でさえ、今後中国による履行が確認できない等の理由で意味のないものになる可能性もありますし、第二弾、第三弾の交渉が上手く行かないことによって、一旦回避されていた追加関税が発動となる可能性もあります。その間地政学的リスクによって両国間の関係が交渉に影響を与えることもあるでしょう。

 前述の通り、米中貿易問題が米国の成長率に与える影響はほとんど無いと思いますが、恐らく市場は今後、超長期間にわたって米中貿易問題と付き合っていかなければならなくなるでしょう。しかしこれは「リスク」ですから、米中貿易問題を気にして投資できないでいると、ずっと米国株の上昇には付いていけないということになるでしょう。