毎週金曜日夕方掲載

本レポートに掲載した銘柄:ソニー(6758)任天堂(7974)バンダイナムコホールディングス(7832)カプコン(9697)

1.家庭用ゲームセクターの動向-ソニーのPS5は2020年年末商戦に発売へ-

1)2020年年末商戦でソニー・ゲーム事業は世代交代に向かう

 今回の特集は、ゲーム株です。家庭用ゲーム会社に焦点を当てます。

 家庭用ゲーム市場は新しい時代を迎えようとしています。

 まず、ソニーです。2019年10月8日付けで、ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、家庭用ゲーム機の次世代機(プレイステーション4(PS4)の後継機)、プレイステーション5(PS5)の発売時期を、2020年年末商戦期とアナウンスしました。おそらく、2020年11月最終週からクリスマスまでの間になると思われます。いよいよ家庭用ゲーム市場の一大イベントである「世代交代」が始まります。

 2019年4月にソニーとして初めてPS5について情報提供してから、PS4ハードは買い控えが始まっており、PS4用ソフト市場も下り坂になり始めています。PS5ハードは価格が未定ですが、家庭用ゲーム機は幅広い一般大衆に普及させるためにハード価格が重要になります。PS5はPS4との下位互換性を付け(PS5でPS4用ソフトが遊べるようになる)、画像処理能力がPS4に比べ格段に向上するため、原価はPS4よりも高くなると思われます。そのため、おそらく最初の小売価格はPS4の最初の価格である3万9,980円を超えると思われますが、どの程度に抑えることができるのか、4万円台前半なのか、後半なのか、あるいは5万円台になるのか、重大な関心を持つ必要があります(PS5の価格が未定なので、グラフ1ではPS5の販売台数予想を行っていません)。

グラフ1 ソニーのゲームサイクル:プレイステーションの販売台数

単位:万台
出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

2)PS5の脅威はグーグルの「Stadia」、しかし評価には時間が必要

 これまでも楽天証券投資WEEKLYで指摘しましたが、PS5の脅威はグーグルのクラウドゲームサービス「Stadia(ステイディア)」になると思われます。Stadiaは、高速、低遅延のストリーミングゲームサービス(ゲームソフトをインターネットで流しっぱなしにする)です。端末としては、スマートフォン、パソコン、テレビが使えます。

 Stadiaは11月20日から欧米の14カ国でサービスが開始されました。最初の評価は、芳しいものではありません。プレイヤーがボタンを押した後の画面の変化に遅延が発生しているようです。ゲームソフトも古いものが多いという評価が出ています。

 ただし、これらの評価は織り込み済みと言ってよいと思われます。Stadiaがもしゲーム市場を大きく変える存在になるのであれば、そのような難しい技術が短期間で成功するとは考えにくいからです。普及し始めるのは、おそらく、ラストワンマイル(自宅あるいはプレイヤーから最寄りの基地局(無線の場合)あるいは加入局(有線の場合)の間)が低遅延の5G(第5世代移動通信)になってから、そして、その背後のネットワークも今以上に高速化されてからと思われます。また、ゲームソフトの数が増え、古いソフトだけでなく、新作が出てくることも重要です。従って、Stadiaの評価にはしばらく時間(2~3年)がかかると思われます。

 このことは、PS5についても同じです。価格が未定で未発売でStadiaの評価が定まっていない状態では、評価保留とならざるを得ません。

3)イメージセンサーの将来性に注目したい

 当面のソニーの評価は、ゲーム部門を除いたところで行いたいと思います。ゲーム以外では、ソニーは重要な業績ドライバーを持っています。イメージング&センシング・ソリューション事業(旧半導体事業)であり、ソニーが世界シェア約50%を占めるイメージセンサーの事業です。スマートフォンのカメラの多眼化、イメージセンサーの大判化、そして5Gの普及に伴い予想されるスマホカメラのより一層の高性能化がソニーのイメージセンサー事業を大きく成長させると思われます。

 楽天証券では、今後6~12カ月間のソニーの目標株価を8,800円としていますが、今回のレポートでもこれを維持します。投資妙味を感じます。

(ソニーの業績の詳細は、楽天証券投資WEEKLY2019年11月15日号同2019年11月22日号を参照してください。)

表1 ソニーの業績

株価    7,088円(2019/12/5)
発行済み株数    1,230,343千株
時価総額    8,720,671百万円(2019/12/5)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は当社株主に帰属する当期純利益。 
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

表2 ソニーのセグメント別営業利益(通期ベース)

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:2020年3月期以降の会社予想と楽天証券予想は、「その他」と「全社及びセグメント間取引消去」を合算して表示している。
注2:2017年3月期1Qよりデバイス部門が半導体とコンポーネントに分離された。また、電池事業売却に伴い2018年3月期よりコンポーネントがその他に吸収された。2020年3月期より、ホームエンタテインメント&サウンド、イメージング・プロダクツ&ソリューション、モバイル・コミュニケーションがエレクトロニクス・プロダクツ&ソリューションに統合された。