リテール重視戦略に高評価、ファンダメンタルズも堅調

現地コード 銘柄名
01398

中国工商銀行

(インダストリアル・アンド・コマーシャル・バンク)

株価 情報種類

 5.76HKD
(11/27現在)

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 中国工商銀行はリテール・バンキング(個人や中小企業向け)業務をより重視した経営資源の配置を行う形で、「汎リテール(Pan Retail)」戦略を推進している。BOCIは銀行セクターを取り巻く環境や国内経済の不確実性に立ち向かうという点から、同行の戦略調整を前向きに評価。19年予想PBR(株価純資産倍率)0.83倍に基づいてH株目標株価を設定し、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。

 リテール事業に資源を振り向ける中、19年7-9月期には貸し出し全体に占めるリテールの割合が37.4%と、過去最高水準を記録した。うち個人向け不動産ローンの比率は、19年上期の段階で30.2%に上昇。個人向けビジネスローンも1.9%に上向き、BOCIは今後もこの分野の伸びが続くとみている。一方、企業向け貸し出しに関しては、構造的なアップグレードが進行中。製造業向け融資のウエートは上期に前期比横ばいだったが、新規融資はハイエンド製造業分野に集中するという特徴が見られた。同行はまた、新興産業に対しても、より多くの資源を振り向けている。

 預金コストが膨らむ中、純金利マージン(NIM)は縮小傾向にある。19年上期には実際、個人向け定期預金を筆頭とする預金コストの増大が鮮明だった。ただ、政府当局が預金獲得競争の鎮静化に向けて動く中、BOCIは預金利息の上昇の勢いがこの先弱まるとの見方だ。また、P2P(銀行を介さずネット経由で行う小口融資)に対する規制強化や資産運用商品の利回り低下により、この先、一定割合で銀行に資金が還流する可能性を指摘。同行が高コスト預金の削減を進めていることや中長期融資に積極的であることなども、NIMの縮小圧力の軽減に寄与するとみている。

 19年7-9月期には、不良債権比率が1.44%まで低下する半面、不良債権カバー率が198.09%に上向いた。また、延滞債権比率は上期の段階で1.68%に低下し、不良債権に占める3カ月超の延滞債権の割合は76.7%の低水準を維持した。資産構成が改善する中、資産の質は今後も安定的に推移する可能性が高いとしている。

 一方、19年上期には、支払決済業務や投資銀行業務、保証・コミットメント業務の貢献で、手数料収入が力強い伸びを示した。資産運用業務を手掛ける子会社・工銀理財(ICBC Wealth Management)は急成長を遂げ、7-9月時点で商品規模が4,400億元を突破。BOCIは資産運用ビジネスの今後の収益回復を見込む。

 BOCIは19年、20年のEPS伸び率を前年比4.5%、3.6%と予想。銀行セクターや国内経済を取り巻く不確実性に対処する上で、同行の堅調なファンダメンタルズがプラスに働く見通しを示した。19年予想PBRである0.83倍をあてはめてH株の目標株価を設定し(現在株価同0.75倍)、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。