不動産投資も「みなとみらい」が牽引する!?

 三つの地域を分析していこう。まず人口増加率(図表1)。「横浜」駅のある横浜市西区は3.86%増に対し、「桜木町」駅、「関内」駅のある横浜市中区は1.56%。横浜市全体の人口増加率は1.0%となっており、西区は横浜市の人口増加を牽引する存在でもある。増加の一因になっているのが、開発が加速しているみなとみらい地区。開発の進展具合は、今後の横浜市の成長を左右するだろう。また世帯について(図表2)比べると、西区のほうが中区よりも3%ほど単身者比率が高い。東京都心へのアクセスがよく、大規模な繁華街を構成する「横浜」駅のほうが、単身者に好まれる傾向にあると推測される。

[図表1]2地域の人口動態

出所:平成27年度「国勢調査」より

[図表2]2地域の世帯数

出所:平成27年「国勢調査」より

 住宅事情を見ていこう(図表3)。二つの区を比較すると西区のほうが、2%ほど空室率が高い。横浜市全体では6.36%であり、それと比較しても西区は空室率の高いエリアだと言える。これは国内でも随一の繁華街であり、好アクセスが魅力の「横浜」駅周辺は、単身者の賃貸ニーズが高いエリア(=賃貸需要が高く、物件供給も多い)であることに起因すると推測される。さらに後述するが、「横浜」駅周辺は築年数の古い物件が多く、築古物件を中心に空室が発生していることも要因だと考えられる。

[図表3]2地域の住宅事情

出所:総務省統計局 平成25年「住宅・土地統計調査」より

 駅周辺に絞って分析していこう。まず人口や世帯について(図表4。3駅周辺とも、単身者ニーズが高く、1世帯当たりの人数は2人を下回る。一方、みなとみらい地区は1世帯当たりの人数が2.03人と、2人を上回る。この地区に建つ物件の多くがファミリー向け物件であり、現在、家族層に支持されていることがうかがえる。

 *「横浜」駅周辺にみなとみらい地区は含まず

[図表4]3駅周辺の人口と世帯数

出所:平成27年度「国勢調査」より

 さらに、直近の中古マンションの取引状況から、駅周辺の不動産マーケットの状況を見てみよう(図表5。3駅とも平均取引平米数が35㎡前後と大きな差はないが、平均取引価格は「桜木町」が91.9万円に対し、「横浜」が66.9万円と大きな差が見られた。その要因として考えられるのが、物件の築年数。「桜木町」周辺で取引された物件は2000年代に建てられたものが多く、平均築年数は13年。一方、「横浜」周辺では2000年代に建てられた物件が目立つ一方で、昭和50~60年代に建てられた物件も多い。平均築年数は21年となり、この差が価格差に大きな影響を与えていると考えられる。

 *「横浜」駅周辺にみなとみらい地区は含まず

[図表5]3駅周辺の不動産マーケットの状況

出所:平成27年度「国勢調査」より

 一方で今回、直近の中古マンションの取引状況には、みなとみらい地区の物件は見当たらなかった。この地区の物件は築浅で、取引数も限られていることが要因と考えがれる。今後、この地区の物件の取引きが増えたときに、不動産市場にどのような影響を与えるか、注意深く見ていく必要があるだろう。

 次に将来人口推移を見ていく。実は横浜市全体では、2020年に人口はピークアウト。2030年に3,668,329人、2040年に3,529,740人と推移。2015年を100とすると、2040年には94.8となる計算だ。

 人口減少は、横浜市でも郊外の金沢区(2040年は76.2)栄区(2040年は78.5)、瀬谷区(2040年は83.1)などが中心。みなとみらい地区擁する西区は、2040年は105.6と順調に推移。一方中区は、2040年は99.5と若干の人口減少が見られる。

 *2015年時点での人口を100とする

 駅周辺の将来人口推移をメッシュ分析で見ていく。黄色~橙で10%増、緑~黄緑0~10%、青系色で減少を表すが、「横浜」駅周辺(図表6)、「桜木町」駅周辺(図表7)は、増加傾向である一方で、「関内」駅周辺(図表8)では、駅南側の伊勢佐木町地区、坂が多い山手地区で、人口減少が目立つ。今後の「関内」駅周辺での不動産投資では、エリアと物件の選定が重要になるだろう。

[図表6]2015年~2040年「横浜」エリアの人口増減率

出所:RESASより作成

[図表7]2015年~2040年「桜木町」エリアの人口増減率

出所:RESASより作成

[図表8]2015年~2040年「関内」エリアの人口増減率

出所:RESASより作成

◆まとめ 

 今回、住みたい街として人気の「横浜」を中心に、不動産投資の観点で分析してきた。現在の横浜は「みなとみらい地区」が成長を牽引しているが、今後もその傾向は続くと推測される。

 しかしこのエリアは、新築物件が多く、中古マンションの取引は少ない。今後中古不動産の取引が活発になったとき、どのような影響を及ぼすか、注意深く見ていく必要があるだろう。

 またみなとみらい地区に近い「横浜」「桜木町」は、安定した人口増加、賃貸需要が見込まれ、不動産投資の観点でも魅力的だと言えそうだ。一方、現在人口増加が見られる地区からは遠い「関内」は、今後、エリア選定、物件選びは注意深く進めていく必要があるだろう。

(GGO編集部)

※この記事は2019年9月20日に幻冬舎ゴールドオンラインサイトで公開されたものです。

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