「大宮」駅周辺は人口減少の局面へ

 二つの地域を分析していこう。まず人口増加率(図表1)。「浦和」駅のあるさいたま市浦和区は6.65%増に対し、「大宮」駅のあるさいたま市大宮区は4.95%。東京駅を起点とすると「浦和」は22km、「大宮」は30kmであり、浦和のほうが東京のベットタウンという性格が強く、人口吸引力が強いと推測できる。また世帯について(図表2)比べると、浦和のほうが単身者世帯率は低い。前出の通り、浦和は文教都市としても知られており、ファミリー層に選ばれる地域だといえそうだ。

[図表1]2地域の人口動態

出所:平成27年度「国勢調査」より

[図表2]2地域の世帯数

出所:平成27年「国勢調査」より

 住宅事情を見ていく(図表3)。二つの区を比較すると空室率は共7%台と同水準である。埼玉県の平均は6.45%、さいたま市は6.41%であり、それと比較すると空室率は高い。このデータは、賃貸ニーズが高いエリア(=賃貸需要が高く、物件供給も多い)は数値が高くなる傾向にある。たとえば単身者ニーズの高い埼玉県でも東京よりのエリアである川口市は8.18%、戸田市は8.43%となっている。浦和、大宮両区も、埼玉県の平均水準に比べて、賃貸ニーズの高いエリアだと言えそうだ。

[図表3]2地域の住宅事情

出所:総務省統計局 平成25年「住宅・土地統計調査」より

 駅周辺に的を絞って分析していく。まず人口や世帯についてみていく(図表4)。人口については、「浦和」>「大宮」という図は変わらないが、一世帯当たりの人数を見ると共に2.12人と、両駅の周辺に限れば、同じような人口構造であると推測される。

[図表4]2駅周辺の人口動態と住宅事情

出所:平成27年度「国勢調査」より

 しかし直近の中古マンションの取引からマーケット状況を分析した[図表5]を見てみると、浦和と大宮では、価格に約1,000万円の差が見られた。これは、文教都市としての性格を持つ浦和は家族層からの支持が厚く、大宮に比べて駅周辺にファミリータイプの物件が多い結果だと考えられる。それにより、平均取引価格、平均平米数が高くなったのだろう。

[図表5]2駅周辺の中古マンションの取引状況

出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成

 将来人口推移を見ていく。さいたま市全体(図表6)では、2030年の1,318,050人をピークに減少。2015年を100とすると、2030年に104.3となるが、2040年には103.0、その5年後には101.7と、人口減少は加速していく予測である。

[図表6]さいたま市の将来推計人口

出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」

 駅周辺の将来人口推移をメッシュ分析で見ていく。黄色~橙で10%増、緑~黄緑0~10%、青系色で減少を表すが、「浦和」駅周辺(図表7)は安定的な人口増加が期待される一方、「大宮」駅周辺(図表8)では、北エリアで人口減少が見込まれる。一般的に東京都心からのアクセスが良いと将来人口推移はプラスになり、悪いほどマイナス幅は大きくなる。両地域を比較すると、都心に近い「浦和」のほうが、将来人口の点ではプラスだと言えそうだ。

[図表7]2015年~2040年「浦和」エリアの人口増減率

出所:RESASより作成

[図表8]2015年~2040年「大宮」エリアの人口増減率

出所:RESASより作成