地方銀行株に「変革の波」、投資タイミング到来?

 2019年11月11日、福島銀行がSBIホールディングスとの資本・業務提携を発表しました。同日夕方に記者会見した同行の加藤容啓社長は「マイナス金利の長期化で貸出金利息収入の伸びが見込めない中、金融商品の販売などで経営改善に弾みをつけたい」とネット金融大手との提携に踏み切った背景を語りました。

 注目すべきは、その後の同行株の動きです。

 11月11日(月)310円(67円高/一時ストップ高)
 11月12日(火)390円(80円高/ストップ高買い気配)
 11月13日(水)386円(4円安/高値470円一時ストップ高)

 提携発表後「一時を含め3日連続ストップ高」となりました(注:その後反動安に)。ゴールデンウイーク以降、200円台で推移していた同株がたちまち400円台後半まで急伸したのです。今回の提携を投資家がポジティブに感じたことは言うまでもありません。

 ちなみに、9月6日に第二地銀の島根銀行がSBIホールディングスとの資本・業務提携を発表した際にも、600円近辺の動きをしていた同行株が2営業日のうちに842円(9月9日)の高値を付けました。

 地銀の「提携話」は枚挙にいとまがありません。8月26日には山陰合同銀行と野村ホールディングスが、金融商品仲介業務に関する包括提携で基本合意したと発表しています。発表直後、山陰合同銀行株に大きな動きはなかったものの、全体相場の出直りも後押しとなり、足元、年初来高値近辺の動きとなりました。

 この他、東海東京フィナンシャル・ホールディングスも複数の地銀に提携を打診していることを明らかにしています。さらに地銀同士の提携も活発化しています。象徴的なものとして、横浜銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループと、地銀大手の千葉銀行が業務提携を基本合意したことが挙げられます(7月10日)。「千葉・横浜パートナーシップ」とした提携の枠組みで、営業部門を中心に連携するとしています。

 他方、提携とは異なるものの、スルガ銀行の創業家が保有している同行の株式(約13%)を家電量販大手のノジマに譲渡するとした例もありました(10月25日)。

 地銀には“数十年に一度の変革の波”が押し寄せていると言って差し支えないでしょう。変革と全体相場の堅調を背景として、「地方銀行株」の株価が出直り基調となっています。

 地銀株の多くはそれほど流動性が高くなく、通常は積極的な売買の対象とはならないセクターです。すでに出そろっている上場地銀の2020年3月期上期決算は、78社中、増益は22社(うち黒字転換1社)、減益は56社(うち赤字転落2社)と厳しいものです。この下期も与信費用の増加などによる業績下振れリスクを抱えている地銀も多くあります。投資対象として万全とは言い難いところですが、今、変革の波が押し寄せているのです。

「最悪期を経て変革が起こる時」というのは、過去の他セクターにおいても、最も魅力的な投資タイミングだったということが多くありました。熟考を必要とするものの、ひとつだけ確かに言えることとしては、これまで投資対象として眼中になかった地銀株がターゲットに入り始めてきたということでしょう。

 ここでは株価に動意が見られる地銀株を参考として取り上げます。